『フェイス/オフ』をモーっと楽しもう
おかえりなさいませ(*- -)ペコリ
『フェイス/オフ』の
徹底解析 完全ネタバレとなっております
賞前のお客様はご遠慮下さいませ
本記事は 『フェイス/オフ』感想レビューとなっておりネタバレが含まれております。
本編未鑑賞の方は予備知識編『100倍楽しもう』の記事をご確認の上で再度お越しください
目次
フェイス/オフ
1997年:アメリカ公開 1998年:日本公開 監督:ジョン・ウー 脚本:マイク・ワープ、マイケル・コリアリー 製作:デヴィッド・パーマッド、テレンス・チャン クリストファー・ゴドシック、バリー・M・オズボーン 製作総指揮:マイケル・ダグラス、ジョナサン・D・クレイン スティーブン・ルーサー 出演者:ニコラス・ケイジ、ジョン・トラボルタ 他 音楽:ジョン・パウエル 主題歌:「Don't Loose a Head」INXS 撮影:オリバー・ウッド 編集:スティーヴン・ケンパー クリスチャン・ワグナー 製作会社:パラマウント映画 タッチストーンズ・ピクチャーズ 配給:パラマウント映画 ブエナビスタ インターナショナル
『男たちの挽歌』を手掛けた香港映画界の巨匠ジョン・ウー監督の渾身のハリウッド作品が『フェイス/オフ』。元々の脚本は映画学校の学生が書いたものでSF作品であったがジョン・ウーがSF要素を全て削り登場人物の内面に人間性を取り入れる事で脚本を大幅に書き直し製作に漕ぎつけたそうである。
個人的には20世紀の最高傑作のアクション映画と思っているだけに非常に思い入れが強い作品となっているといったようにココでは『フェイス/オフ』を既に鑑賞しているという前提で記事を作成しております。ネタバレ注意となっておりますのでご了承ください。
アーチャーとトロイ
当初はA・シュワルツェネッガーとS・スタローンでフェイス/オフの企画が進んでいたという話であったが(それはそれで観たいものだが)今となってはJ・トラヴォルタとNケイジだからこそ人間性に深みが出た事で最高傑作のアクション映画となったと個人的には思っている。
この対象的な性格でもあり憎しみ合っている二人が顔を入れ替える事になってしまうのだがアーチャーとトロイがどんな男なのか…をここでは考察してみたい。
ショーン・アーチャーという男
最愛の息子を殺されてからはキャスター・トロイ逮捕だけに執念を燃やしているアーチャー。多くの勲章を得ていることから優秀な捜査官ではある事は分かるがトロイの事となると感情的になるため仲間には距離を置かれ冷たい目で見られることも…
冒頭の息子マイケルとの遊園地でのシーンを見る限り家族を一番に大事にしていた事が伺える。しかしマイケルを失ってからは家庭を顧みずトロイ逮捕に執念を燃やすあまり家族とは上手くいっていない様子であった
妻からの電話を無視したり、娘ともコミュニケーションが取れておらずプチ家庭崩壊状態。トロイは息子のマイケルだけではなくアーチャーの家族・仲間と…全ての幸せを彼から奪ってしまっていました。
トロイ逮捕後に仲間から祝福を受けるも『何の真似だ』と睨み返している。CIAから贈られたシャンパンも『送り返せ』と一喝。『俺はこんな祝福を受けるためにトロイを追いかけていた訳ではない!』と言わんばかりの態度で空気が全く読めていない男になっている。
トロイを捕まえた所で息子のマイケルは戻ってこない…家族とも上手くいかず…仲間との信頼関係も無くなっている。トロイ逮捕は一応の区切りではあるが彼の生きる理由はトロイ逮捕と共に消え失せてしまった中で更なる展開へ進んでいく…
キャスター・トロイという男
メサイアを歌う合唱団で狂喜乱舞するキャスター・トロイ。歌詞の『ハレルヤ』は『神を褒めたたえよ』の意味。美少女の尻を鷲掴みした後で吠えている姿はまさに神をも恐れぬ男と言える
極悪非道で血も涙もないキャスター・トロイだが弟のポラックスだけには寵愛を示している。トロイにはアダムという息子がいるという事は現段階では知らないので弟のポラックスがトロイの唯一の家族でもある。
この世の全ての悪を具現化したような男で酒に麻薬に殺しにテロ活動…と手を染めていない犯罪は果たしてあるのか…コンベンションセンターに細菌爆弾を仕掛けロサンゼルス市民を大量虐殺しようとしている。このテロ行為も信念からの行動ではなく、ただ金欲しさの雇われテロリスト。まさにゲスという言葉がふさわしい男がキャスター・トロイという人物なのである。
固執と本能
息子を殺されたアーチャーはトロイ逮捕だけに固執するあまり周りが全く見えていない状況。逮捕できれば他はどうなってもよい…といった感じで家族や仲間の気持ちを完全に疎かにしている。
一方のトロイは殺したい時に殺す…抱きたい時に女を抱く…といった欲望のままに生きる本能むき出しタイプの人間。
共に周りの人たちを犠牲にしていて、それを悪いとは全然と思っていないのが非常にタチが悪い。そんな二人が顔を入れ替えた事で固執と本能が混ざり合ってしまう事になる…果たしてどんな化学反応が起こるのか…これも本作の魅力の一つでもありました。
冒頭から炸裂するジョン・ウー節
序盤から まるでクライマックスのようなド派手なアクションシーンが連発。飛行機にパトカーにヘリコプターに…いくら残虐非道な悪人とはいえココまでの犠牲を払ってまで捕まえる理由はあるのか…というツッコミは考えてしまうのは野暮かもしれません。
他にも2丁拳銃にメキシカン・スタンドオフといったジョン・ウーの代名詞とも呼べる演出がふんだんにされていま。まさにハリウッド映画ならではの大迫力シーンが満載で最後まで続く緊張状態は見事でした。
2丁拳銃
ジョン・ウーと云えばスローモーションで『二丁拳銃ダイブ』。出し惜しみなく冒頭から二丁拳銃でバンバン撃ちまくり『ジョン・ウー節』が炸裂
メキシカン・スタンドオフ
メキシカン・スタンドオフもジョン・ウーお得意の演出で銃を向けあう事でお互いが動けない…といった状況。はっきり言ってココまでで既に満腹状態。何度でも言います…まだ序盤ですから!
ゲスの極みトロイ
メキシカン・スタンドオフからトロイは銃に弾が入っていない事に気付くと、すぐに『ゴメンナサイ』ポーズを…本当にゲスすぎる男。しかも命乞いをしながら隠し持っていたナイフでアーチャーに襲い掛かるが…アーチャーに見抜かれトロイはジェット機のエンジンの噴射に吹っ飛ばされ意識を失ってしまう。
冒頭のシーンではアーチャーの異様なまでのトロイ逮捕に固執する姿とトロイの本能のまま生きるゲスっぷりの姿が印象的でした。
フェイス/オフ(顔面交換)
フェイスオフとは本来はアイスホッケー用語で向かい合った選手の間にパックを落として試合を開始する時に使う用語だが映画『フェイス/オフ』では作中でもトロイ(中身はアーチャー)が言っていたように『顔を剥がす』という意味。だからこそフェイスとオフの間に『/』が記載されているのではないでしょうか。
アーチャーとトロイは顔を入れ替える事となるが本作で面白いのが2人の内面の変化。今までは敵としか見えていなかった両者ではあるが、お互いに家族がいて生活があり…そして仲間がいた事を知った事で固執と本能が化学反応してしまう事になる
トロイになったアーチャー
監獄でデュボフと喧嘩になった時に『俺はキャスター・トロイだ!』と叫びながらデュボフをフルボッコしているシーンは印象的で最も憎むべき男の様な振る舞いをしたくはないのに…しなければいけない心の葛藤が『快楽』と『哀しみ』という二つの表情で演出されていました。この両極端の表情が狂気じみたキャスター・トロイそのものになっている。
アーチャーは憎むべき男トロイにも家族がいた事を知ってしまう。アーチャーはサーシャの尋問で『息子と離れ離れにするぞ』と非常な脅しをかけていました。
顔を入れ替える前まではトロイに関係する者は全員ブタ箱に入れてやる!といった無慈悲な捜査官であったがサーシャの息子アダムを目の前にした時に失ったマイケルとダブらせてしまいます。
サーシャにも愛すべき息子がいて…母親と子供を引き離そうとしていた…という罪の意識にかられる事に…
アーチャーになったトロイ
アーチャーと違いトロイの方は顔を入れ替えた事に対し十分に楽しんでいる様子。無理にアーチャーを演じず本能むき出しのトロイのままでアーチャー家族に接していました。
『俺は君に飢えているんだよ…俺のピーチ』お堅いアーチャーが絶対に言わないセリフを自宅前で恥ずかし気もなく妻に言っている。トロイは不自然に思うかも…なんて事は一切考えず我を通している。この段階ではバレたら殺せばいいや…くらいにしか思っていなかったのでしょう。
更に自分(トロイ)が仕掛けた爆弾を自ら解除した事で仲間から拍手喝采を受け、それに応えるアーチャー(トロイ)。序盤のトロイ逮捕時の無愛想なアーチャーが見事な伏線となり仲間からは『人が変わったみたい』と言われていました。
人が変わっているのだが…妻や娘の前だけではなく職場でもトロイを突き通すアーチャー(トロイ)。この男の辞書には『恐怖』という文字はないのかもしれませんね
ボーイフレンドに襲われそうになった娘ジェイミーに『今度、襲われそうになった時にはコレを突き刺せ!』と言ってナイフを渡してました。結局はジェミニ―にナイフで刺されたのはアーチャー(トロイ)自身。
娘もいつものパパじゃない…と思いながらも不思議と親子のコミュニケーションが回復していたのは皮肉な演出でした。やっぱりチョイ悪の方がモテルのでしょうか…(笑)
アーチャーになったトロイは臆する事もなく自分を貫き通しているのだが何故か本物のアーチャーが失っていた妻との関係や娘とのコミュニケーションや同僚との信頼関係を回復していくという皮肉めいた演出がされていました。
芸術とも呼べる銃撃戦
物語中盤でアジトでFBIとの銃撃戦となるシーンがあるのだが私はこの映画で最も大好きなシーンでもあります。とにかくカッコ良くて…切なくて…まさに芸術とも呼べる演出が数多くされていました。
ジョン・ウー監督の十八番でもある二丁拳銃やスローモーションはもちろんだが鏡越しのメキシカン・スタンドオフは鳥肌モノ。
アーチャー(トロイ)が『元に戻ろう』と提案した事にトロイ(アーチャー)は『奪われたモノは戻らない』と返している。もちろん『奪われた者』というのは息子マイケルの事。
このシーンは製作費の関係から鏡なしで行われる予定であったがジョン・ウーが自費を出してでも絶対に撮りたいという要望から監督が自らのギャラから鏡を用意したというエピソードがある。もちろん鏡を置いたことは大正解であった事は書くまでもありませんよね。
マイケルとアダム
トロイとサーシャの子供のアダムに失ったマイケルをダブらせてしまったアーチャー。
本来なら敵でもあるトロイの息子だけに助ける義理は全くないのだが『この子だけは絶対に死なせない』と必死にアダムを守り抜いている。
この無秩序とも呼べる銃撃戦の中で最も不釣り合いと言える『無垢な子供』を加える事で画の力強さを演出しているのは芸術の域に達している。更にこの銃撃戦を芸術の域まで引き上げたのが『オーバー・ザ・レインボー』というBGMでありました。
オーバー・ザ・レインボー
Over the Rainbow/虹の彼方に
1939年のミュージカル映画『オズの魔法使い』でジュディ・ガーランドが歌った劇中歌。
アダムを怖がらせないために付けたヘッドホンから流れるのが名曲オーバー・ザ・レインボー。この曲が銃撃戦の中でBGMとして流れてくる。
銃撃戦という演出の中で不釣り合いとも呼べる『無垢な子供』と『オーバー・ザ・レインボー』 を付け加えたことで対照的な気持ちになってしまいます。
理由は全く分からないが何故か…このシーンは何回観ても涙が溢れてくる。心の奥底に突き刺さる何かがあるに違いない。
アダムがもたらしたもの
アーチャーは宿敵であるトロイを殺したことで一つの区切りをつける事ができたのだが…同時に生きる目的を失った事にもなりました。
しかしトロイの息子であるアダムを家に迎える事で暗く沈んでいたアーチャー家に一筋の光が射すのです。アダムはアーチャーによって命を救われる事になりましたが…逆にアダムによって家族は再び『家族愛』を取り戻すことができたのです。
ジョン・ウー監督は非常に子供の使い方が上手すぎる。今回の記事を書く上で『フェイス/オフ』を5回以上鑑賞したが何度見ても涙が止まらないエンディング。このシーンこそが『フェイス/オフ』全てのカタルシスになっていました。
総括
誰が何と言おうとも…個人的には20世紀最高のアクション映画。ストーリーも抜群で出番は少ないがアダムの2つのシーンで涙が止まらなかった( ;∀;)。なんか…リメイク版の話があったのだが…どうなったのだろう…全然情報が降りてこない。もしリメイクがあったとしても果たしてトラヴォルタとNケイジを超える作品が創れるのだろうか…といった所でオツカレっす!!