『ヘイトフル・エイト』を100倍楽しもう
おはこんばんちわ(-ω-)/
管理人軍師かんべえです。
鑑賞前の予備知識!映画はもっと面白くなる。今回の作品はコチラ!
『ヘイトフル・エイト』鑑賞されている方は
鑑賞後レビュー『モーっと楽しもう』にどうぞ
目次
ヘイトフル・エイト
黒人が安心できる時は…
白人が丸腰の時だけだ
2015年:アメリカ公開 2016年:日本公開 監督:クエンティン・タランティーノ 脚本:クエンティン・タランティーノ 製作:リチャード・N・グラッドスタイン ステイシー・シェア 他 製作総指揮:ボブ・ワインスタイン ハーヴェイ・ワインスタイン 他 ナレーター:クエンティン・タランティーノ 出演者:サミュエル・L・ジャクソン、カート・ラッセル ジェニファー・ジェイソン、ウォルトン・ゴギンズ ティム・ロス、チャニング・テイタム 他 音楽:エンリオ・モリコーネ 撮影:ロバート・リチャードソン 編集:フレッド・ラスキン 製作会社:Double Feature Films FilmColony 配給:ワインスタイン・カンパニー ギャガ
2015年にアメリカ公開されたクエンティン・タランティーノ監督の8作品目となる『ヘイトフル・エイト』
生涯で10作品だけ と宣言している中での8作目であり…2019年には『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』が公開された事で残すところ あと1作品となってしまった(2022年現在)。
1992年に『レザボア・ドックス』で監督デビューを果たしたタランティーノは1994年の2作目『パルプ・フィクション』で世界に名を轟かせることになる。監督でもあり、脚本家でもあり、俳優でもあり、プロデューサーでもあるタランティーノは まさに映画愛に溢れる映画オタク人と言っても過言ではない
独特の感性を持つタランティーノは作品に対しても彼のアイデンティティが溢れ出ているためハッキリと好き嫌いが分かれてしまう事が多いので受け入れられない人にとっては無理な作品となってしまう
長ったらしいセリフ回しの会話劇は嫌いな人にとっては退屈でしかないのだが…私みたいなタランティーノ信望論者にとっては下手な女性ヌードを見るよりも刺激的で官能的に捉えてしまうものである
もちろん今回 紹介する『ヘイトフル・エイト』でもタランティーノ色がふんだんに使われており167分と長編となっているが時間が全く気にならないほど没頭してしまうくらいに面白かったのだが…
先ほども書いたたように好き嫌いが分かれるタイプの監督なので…タランティーノ未経験者はまず『パルプ・フィクション』を試しで観て自分の好みに合うか判断して欲しいくらいだ
『パルプ・フィクション』を100倍楽しもう
タランティーノ作品の特徴といってイメージされるのが強烈なバイオレンス描写。とにかく血がブシャーと飛び散ってこそタランティーノ映画なのである。しかし、ただグロテスクが演出されているのではなく どことなくユーモラスでもありスタイリッシュな感覚にも陥ってしまうのである
本作でも殴る、蹴る、撃つ、血が噴射、血反吐…のようなゴア描写が満載でバイオレンスを期待されている方は裏切られる事はまずないだろう。冒頭に出てくるジェニファー・ジェイソン・リーが顔に青タンを作って登場するくらいだ…女だろうと顔面を殴る表現は造作もない…と言わんばかりである。
更にタランティーノ作品の特徴となるのが一見は無駄とも言える会話劇の長さ。冒頭で延々と語られる小話。後のストーリーに関連するのかと思っていたら 本当にただの小話だった…なんて事をさも当然の様な顔で演出してくる。ただ何故か その会話劇を聞き入ってしまうのだから不思議で仕方がない。
そしてタランティーノ作品の最大の特徴が彼自身が超ド級の『映画オタク』であるという事。彼は映画監督になる前はレンタルビデオ屋でアルバイトをしており、その際に相当数の映画を鑑賞していたというのは有名なエピソードで…今でも映画の話になると止まらなくなるみたいだ。
その膨大な映画作品の知識量が彼の作品の中に表現されているのである。良く言えばインスパイアだが…悪く言えば ただのパクリ(許可は得ている)になってしまう。ただ タランティーノに掛かればオリジナルを超えるインパクトを放ってしまうのである。一つ例題を挙げるならユア・サーマン主演の『キル・ビル』のテーマ曲である『BATTLE WITHOUT HONOR OR HUMANITY』この楽曲は実は…
布袋寅泰が出演したヤクザ映画『新・仁義なき戦い』で布袋自身が作曲した楽曲だったのである。この作品をタランティーノが気に入ってしまい『キル・ビル』のメインテーマ曲としてオファーを出したそうだ。今では『キル・ビルのテーマ曲』と思われているが実はコレもパク…いや楽曲を提供してもらったという形になるのだ。しかしこんなヤクザ映画も観る程のオタクなんですね
映画マニアにとってタランティーノ作品は『このシーンは○○からの引用だね』なんて楽しみ方もできるのである。あざとく演出しているのもあれば…あからさまのものまであるから非常に楽しいのである。
予告や宣伝用ポスターに『密室』ミステリーなんて謳っているが…謎解きを期待している方は残念ながら本作ではなくコナン君を観て下さい。確かにミステリー要素もあるには あるのだが殺人の犯人を捜しているのが本筋ではなく…では何を探しているのか??…少しの知識だけで映画はもっと面白くなる!『ヘイトフル・エイト』を100倍楽しもう!
血まみれよぉ…内臓ブシャーよぉ…顔面グシャよぉ…やっぱバイオレンスって素敵ねぇ ♡
ウルトラ・パナビジョン70
もし何も知らずに『ヘイトフル・エイト』を鑑賞した場合に おそらく皆さんは何かしらの違和感を抱くかと思われます。敢えて先にココで説明させて貰うが…本作は約50年ぶりに世界最横長の『ウルトラパナビジョン70』というフイルムを使って撮影されているのである。
緑枠で囲まれた通常映像に対し最横長の青枠で囲まれた超横長の映像を楽しめるのがウルトラパナビジョン70。この比率を見ただけでも大迫力な映像が期待できそうである。
テレビとの差別化
1960年代になると一般家庭でのテレビの普及率は格段に上昇していきテレビで映画を鑑賞するのでは…という状況になる事を映画業界が危惧した事から開発されたのがウルトラパナビジョン70だったのである。
テレビでは決して味わう事ができない大迫力の映像は劇場だと味わえるという事だ。しかし特別な機材で撮影をするだけでなく…特別な機材でスクリーンに映し出すため とにかく費用対効果が悪すぎた事から次第に消えていく事になってしまうのである。
タランティーノ監督は眠っていたウルトラパナビジョン70を再び復活させ何と200人以上の映像技師を雇ってまで本作を公開させたのである。それもこれも私たちに本物の映画を味わって欲しいという願いからである。ココまでくるとオタクという言葉では括ることができなくなってきている。
60年代のロードショー形式
映画愛の熱が半端ないタランティーノ。50年以上前に使われていたフィルムを復活させるほど映像に拘っていたのだが…なんと『ヘイトフル・エイト』は密室の小屋で繰り広げられる会話劇が全体の75%を占めるのである。映像がワイドである必要はあるのか…という疑問が残るのだが…タランティーノはいつも『映画を”体験”として届けたい』という事を常々言っているのである。
「これを70ミリのフィルム上映で、’60年代のロードショー形式みたいな形で公開したいと思っているんだ。だから大きな都市1つにつき大きな映画館1つ、みたいな感じになると思う。で、夕方の上映はチケット予約ができる。そして劇場にはオーバーチュア(序曲)をかけるんだ。途中には休憩が入って、大きくてカラフルなプログラムがあってさ(笑)。俺はまさに、そういう上映スタイルで育ってきた。だからこの方式で上映できるように映画館を援助して、映写技師も雇うつもりだよ」
『ヘイトフル・エイト』:タランティーノと西部の密室 …
日本では70mmフィルム映画は観れない
タランティーノは60年代の形式でロードショーを実現することに成功したのである。しかし残念なことに日本では既に70mmフィルムを上映できる映画館は全て廃館となっていたのである。親日家のタランティーノが来日しなかった理由は明らかである
それでもタランティーノ信望論者の猛者と呼ばれる人たちは上映可能なアメリカやカナダにまで訪れて鑑賞した人がいるみたいだ…
日本では通常の劇場で横長画面として放映されたみたいだが…今となっては劇場公開も終わっているのでレンタルするかサブスクで観るしかないのだが…できるだけ大画面で本作は鑑賞して欲しい映画なのである。
観れないなら説明なんて必要ないんじゃない…って思ったんだけど…タラちゃんの映画愛はしっかりと伝えたかったんでぇ♡
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南北戦争
本作の時代背景がアメリカ南北戦争終結から数年後の冬となっている。まだ戦争の爪痕が残り奴隷解放宣言がなされたとは云え まだ白人と黒人には大きな溝があるという時代設定。
日本人の私たちには馴染みが薄い『アメリカ南北戦争』ではあるが…いったいどういった戦争だったのだろうか。簡単ではあるが本作を深く知るためにココで解説したいと思います
奴隷制度
1776年イギリスから独立したアメリカ合衆国。いくつもの州の連合国であるアメリカはとても一枚岩と呼ぶには程遠い国家でもあった。その理由は北部と南部では産業の在り方が違うため意見の食い違いも絶えなかったみたいで特にアフリカから強制的に連れてこられた奴隷の扱いに対して揉めていたみたいだ。
農業が盛んな南部ではどうしても労働力が必要とされるため黒人奴隷の必要性は絶対だったのに対し、工業を中心としていた北部では流通を盛んにするために奴隷を解放して黒人にも給料を支払い物を消費してもらう必要があったのである。
残念ながら人道的な意味で北部の人間は奴隷解放を願っていたのではなく、あくまでも経済的な意味で解放を訴えていたのである。
リンカーン大統領
黒人奴隷の解放に対して北と南が緊張状態となっている時に奴隷解放の意見を持つエイブラハム・リンカーンが第16代のアメリカ合衆国大統領に就任したことで一気に緊張が激化してしまうのである。
奴隷解放を反対する南部の州が次々とアメリカ合衆国から独立を宣言しアメリカ連合国という もう一つのアメリカを作ってしまったのである。これによりアメリカ合衆国(北軍)とアメリカ連合国(南軍)が争うことになった戦いがアメリカ南北戦争という訳である。
奴隷解放宣言
人民の人民による人民のための政治
戦争開戦当初は士気の高かった南軍が優勢となっていたが次第に生産力で優れている北軍が巻き返しを図るようになってくる。1862年 このタイミングで北軍のリーダーであるエイブラハム・リンカーンは『奴隷解放宣言』をアメリカだけでなく全世界に発するのである。
アメリカだけでなく全世界に発令したのは『奴隷解放』という人道的な宣言をした事で南軍を応援しようとする諸外国の動きを封じる結果となったのである。
更に黒人が立ち上がった事で一気に北軍を勝利に導くことになったのである。1865年 南部の首都リッチモンドが陥落した事で南北戦争は事実上終了となる。
リンカーン暗殺
南北戦争の終結から6日後にリンカーンは南軍を支援していたジョン・ブースによって暗殺されてしまう。
結果として奴隷解放は成されたが黒人差別という問題が浮き彫りになってきたのよねぇ…人間ってホントダメよねぇ
エンリオ・モリコーネ
『ヘイトフル・エイト』で音楽を担当するのは映画音楽の巨匠エンリオ・モリコーネ。かつてマカロニウエスタンの作曲家として欠かせない存在であり…セルジオ・レオーネ監督の『荒野の用心棒』などが大ヒット。日本でもNHK大河ドラマ『武蔵MUSASHI』で音楽を担当している。2020年に入院していたローマの病院で死去。享年91歳
タランティーノとの奇妙な関係
タランティーノと云えばオリジナルの楽曲を自分の映画では使わない…で有名なのだが今回の『ヘイトフル・エイト』では初めて作曲家を雇い新曲を書いてもらったのである。その作曲家が映画音楽の巨匠エンリオ・モリコーネだったのである
ただモリコーネはタランティーノに対し『彼とは どんな作品でも一緒に仕事をしたくない』と相当に嫌われていたみたいだ。その理由はモリコーネが他の映画のために書き下ろした曲をタランティーノは自分の作品に使ったから…という事らしい。
しかしタランティーノの熱意がモリコーネの重い腰を上げる事になります。初めてタランティーノは新曲を書きおろしてもらう事となったモリコーネの曲がアカデミー作曲賞を受賞するという…まさに奇跡が起きてしまう。なんとモリコーネ自身は初のオスカー受賞となったのである。
一時は平行線を辿っていた二人であったが『ヘイトフル・エイト』を通じて奇妙な関係を築くこととなったのである。
映画音楽の巨匠がまさかノミネート止まりだったみたい…不思議よねぇ…素晴らしい曲ばかり書いていたのにねぇ
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忌々しい8人
本作のタイトルとなっている”hateful”とは『憎たらしい』『嫌な』という意味を持っている。つまり『ヘイトフルな8人』となるので私は本作を『忌々しい8人』と訳したのだが…邦題は『裏切りの8悪人』となっているみたい。なんか あまりしっくりこない…
まぁ訳し方は置いておくとして本作のプロット(構成)は南北戦争終結後で遺恨がまだ残る時代。猛吹雪を凌ぐため小屋に集まってきたクセの強い男女8人。彼らが語る事は全て自称であり それを証明するものは何一つない。まさに『ぶつかり合う嘘と嘘』
『全てを疑え』こいつらが語っている事は嘘ばかり…しかし生き抜いていくためには人を欺くことが必要な時代でもあった。そんな時代で正直に生きていく事は非常に難しく…また そのような考え方は弱者の論理として扱われていたのだろう。
もう一度書きます『全てを疑え』何か意味深に2度も書いてしまったが…全てを疑った時に真実が現れるかもしれません。だって『ヘイトフル』なんですから…
この小屋には様々な人間が集まっているのよぉ。黒人に白人にメキシコ人。保安官に賞金稼ぎに極悪人。まさに この小屋はアメリカを表わしているのかもしれないわぁ
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『ヘイトフル・エイト』を楽しむポイント
映画オタクのクエンティン・タランティーノ監督が60年代のアメリカのロードショー方式を復活させる事で実現したウルトラパナビジョン70での公開。残念ながら日本では100%の状態での鑑賞はできなかったのだが…タランティーノの今作に賭ける熱意は充分に伝わったと思われます
しかもタランティーノは極寒の雪山という信憑性を演出するために現場を-1℃という環境にして撮影に臨んでいたみたいだ。役者たちは『”寒い”という演技だけはしなくて済んだ』と笑って語っていたそうだ。
『嘘』だらけの登場人物の中で繰り広げられるストーリーとなっているが 役者や製作陣の本作に賭ける熱意は『本物』だったのでしょう。
本作はタランティーノ作品の中で最長の167分という上映時間となっている。序盤から延々と続く無駄とも捉えられる会話劇は免疫のない方には退屈に思われるかもしれないが後半にしっかりと活きてくる伏線となっているので油断して眠らない様に…
例えるならジェットコースターで延々と坂を登っている様な感覚。頂点まで達した先に待っているのは衝撃的な体験しかないのである。『忌々しい8人』が繰り広げる『嘘』と『嘘』のぶつかり合いを是非とも堪能して欲しい…少しの知識だけで映画はもっと面白くなる!『ヘイトフル・エイト』を100倍楽しもう!
それでは素敵な映画の世界へ行ってらっしゃいませ