『うる星やつら ビューティフル・ドリーマー』をモーっと楽しもう

軍師かんべえ

おかえりなさいませ(*- -)ペコリ
『ビューティフル・ドリーマー』
徹底解析 完全ネタバレとなっております
賞前のお客様はご遠慮下さいませ

本記事は 『ビューティフル・ドリーマー』 の感想レビューとなっておりネタバレが含まれております。
本編未鑑賞の方は予備知識編『100倍楽しもう』の記事をご確認の上で再度お越しください

ビューティフル・ドリーマー

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1984年:日本公開
監督:押井守
脚本:押井守
原作:高橋留美子『うる星やつら』
出演者:古川登志夫、平野文、鷲尾真知子
    藤岡琢也、神谷明 他
音楽:星勝
主題歌:松谷祐子『愛はブーメラン』
製作会社:キティフィルム、スタジオぴえろ
     スタジオディーン
配給:東宝

原作者の高橋留美子の意向を無視して押井守監督が好き勝手に製作した『うる星やつら ビューティフル・ドリーマー』試写会後に高橋留美子が激怒して席を後にした…というエピソードは有名な話で本作完成後に押井はTVシリーズ『うる星やつら』のチーフ・ディレクターを降板。更にスタジオぴえろを退社している…つまり責任を取った形となりました。

そこまでして押井は何を伝えたかったのか…何も高橋留美子が憎い訳でも…うる星やつらが嫌いな訳でもありません。ただ そこに『うる星やつら』があったので利用させてもらった…という感覚なのでしょう。

コメディ・アニメやギャグアニメ特有のキャラクターが歳を取らないという現象に押井は理屈では理解できていても疑念を拭うことはできませんでした。

同じ1年を何度も繰り返している『うる星やつら』を結果的には否定する作りとなってしまいます。

時間が無限にループする世界は押井守にとって『虚構の世界』でしかありませんが高橋留美子にとっては『現実の世界』であると言いたかったのでしょう。

押井守が創った世界は『ラムの夢の中』というものでした。夢だからこそ不思議な現象が起きたとしても理屈が通るというもの。この世界が押井守の『現実』でなのである。

しかし原作者の高橋留美子にとっては押井守の作った世界は『虚構』となってしまいます。

つまり人の数だけ『現実』が複数に存在するという事であり…本人以外はその世界は『虚構』となってしまいます。まるでパラレルワールドのような世界で諸星あたるには諸星あたるの世界があり…ラムにはラムの世界が存在する。全ての世界が『現実』であると同時に全てが『虚構』でもある。

押井守はTVシリーズでは高橋留美子の世界の中で『うる星やつら』のキャラを高橋留美子の価値観の中で動かしていました。もちろんファンはそれが見たい訳なのだが…『うる星やつら2ビューティフル・ドリーマー』では高橋留美子が作り上げたキャラクターを借りて押井守の世界線の中でキャラを動かすという強硬に出てしまったのである

高橋留美子が試写会の後に言ったコメントが『人間性の違い』。価値観の違いなのでどちらが正解とかはないのだが…高橋留美子的には『人の作品でそれをやるなよ…』という事だったのでしょう。まさに本作は『うる星やつら』をレイプしたような作りとなってしまいました。

そして本作は恐ろしい事に押井守のメッセージがあるだけでストーリー(内容)がないのである。何度鑑賞しても意味不明だったのはストーリーが存在していなかったからかもしれません。

あのセリフの意味は…あの人はいったい…アレは何だったのだ…疑問が残るセリフやシーンが本作には多数存在しています…それは本作は押井守が訴えたかったメッセージを上手に入れ込んだ作品だったからなのでしょう…といったようにココでは『うる星やつら ビューティフル・ドリーマー』を既に鑑賞しているという前提で記事を作成しております。ネタバレ注意となっておりますのでご了承ください

軍師かんべえ

前作の『オンリーユー』で宮崎駿や伊丹十三から手厳しい評価を喰らった事で『次は自由に創る』と心に誓ったと押井守は誓ったみたいだ

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責任とってね

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諸星あたるが現実の世界に落とされる前に小さなラムちゃんに言われたのが『責任とってね』の言葉。色々な考察がされているみたいだが私的な意見を述べさせて貰う上で順序よく紐解いてみたいと思います。

ラムの夢の世界

『ダーリンとお母さまやお父さまやテンちゃんや終太郎やメガネさんたちと…ずっとずぅっと楽しく暮らしていきたいっちゃ…それがウチの夢だっちゃ』

給湯室で語られていたラムのささやかな夢は『皆と楽しくいつまでも暮らしていく』というものでした。

この願いを夢邪鬼が作り上げた世界こそが本作の舞台となった訳です。この夢をラムだけが見ていたならラムだけの夢となってしまうが…もし友引町の全員が同じ夢を見ていたとしたら果たして夢と言えるだろうか…コレは現実となってしまうのではないだろうか…そんな疑問が投げかけられていました。

本作のこういった構成は押井守が後に攻殻機動隊を製作するための云わば保険だったのである。

攻殻機動隊

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1995年公開『攻殻機動隊 ゴースト・イン・ザ・シェル』押井守監督の独特な世界観が世間に評価され後のアニメや映画に大きな影響を与えた作品なのだが…『現実』と『虚構』という押井流のテーマが攻殻機動隊には存在していました。

1995年という年代だからこそ『現実』と『虚構』という難テーマは理解できたのだが…もし本作が公開された1984年だとしたら…理解することができたのであろうか…『うる星やつら』という誰もがシンプルに楽しめる世界観の中で押井流の難解な思想を投げ込むと観客はどのような化学反応を起こすのか…人の作品で試した訳です。

結果として原作ファンからは否定される作品となるが世界のクリエイターからは絶賛される作品となり押井守は自分が描こうとしている世界観は1984年では早計かもしれないが後に理解できる時代が来る事を確信したのだと思います…人の作品で…

謎の少女の正体

押井守が好き勝手に製作した『うる星やつら2ビューティフル・ドリーマー』しかし『うる星やつら』は原作者の高橋留美子のモノであるのは疑いようのない事実。

キャラクターを借りている立場なので本作終了後には高橋留美子に返さなくてはいけません。もちろん高橋留美子の世界観をグチャグチャにした訳ですから大人としての責任が問われる訳です。

もうお分かりだと思いますが…この少女(小さいラム)は『高橋留美子』だったのです。

『好きな人を好きでいるために
     その人から自由でいたいのさ』

諸星あたるが現実の世界(高橋留美子の世界)に戻る前に少女は『責任をとってね』という言葉を投げかけていました。

本作の製作終了後に押井守はTVシリーズのチーフ・ディレクターを降板し製作会社のスタジオぴえろを退社しています。最初から責任を取るつもりで本作の製作にあたっていたのでしょう。

押井守は『うる星やつら』もアニメ業界も好きなのである。しかし好きであるからこそ自分は何からも縛られる事なくいたい…というメッセージが込められていました。

あくまでも私個人の考察であるため真相は分からないが…『うる星やつら2ビューティフル・ドリーマー』が押井守の出世作となったのは確かな事実である。

軍師かんべえ

この少女は高橋留美子では…と思った時に背筋がゾクってきました。押井守は天才すぎると…

夢邪鬼

『楽しい学園祭前日を永遠に繰り返す世界があったら…』と願ったのはラムであるがこの世界を創ったのは夢邪鬼でした。この世界を総合的に監督した夢邪鬼という謎の男は実は押井守だったのです。

夢邪鬼が本編で語っていた哲学的な文言は押井守の思想そのもので『現実』と『虚構』を証明するものがない以上は優劣をつける事などできない…過去➡現在➡未来といった軸が狂っていたとしたら時間や日付やカレンダーに意味があるだろうか…などなど。かなり個性的な思想の持主である事が伺い知れます。

アニメ・クリエイターは多くのアニメを製作するのが仕事ではあるが…クリエイターの作家性が強く出てしまうと原作者やプロデューサーから睨まれることになってしまう。

上からの言いなりに製作するのは致し方がないのである。本作でも温泉マークの夢や錯乱坊の夢…竜之介の夢といった夢邪鬼にとってはどうでもよい夢(言われるがままに創った夢)を創りだす事もしていましたが…ラムの夢だけは壊される事に対し必死に抵抗をしていました。

『生まれた時から人の夢の中で住んで…
    人の夢こさえ続けて…
  ひとつくらいワテの夢があっても…

          ええやないか~い!』

今まで数多くのアニメ作品に携わっていた中で自分の作家性を押し殺し原作者や出資者が喜んでくれるような作品を創ってきた中で『うる星やつら2ビューティフル・ドリーマー』だけは絶対に守ってみせる…誰からも邪魔されたくはない…という意思が伝わってきます。

多くのクリエイターが口には出さないが心の底に秘めていた想いだったのでしょう…しかし そのような想いや夢をいつも壊す存在がいます

想いや夢を壊してくる存在は原作者でありプロデューサーであったりするのです。

夢邪鬼が創りだした夢の世界を壊したのは子豚みたいなバクという生き物でした。このバクのお尻に©のマークがあったのを覚えていますか…©とは『著作権マーク』を意味しています。

押井守が作り上げた夢の世界を壊したのは『うる星やつら』の著作権を所有している人間であるという皮肉を込めた演出だったのです。

一般の人はなかなか気付かないかもしれませんが…高橋留美子が気付かない訳がありません。おそらく顔を曳きつかせながら本編を鑑賞していたのでしょう…

軍師かんべえ

クリエイターが本作を称賛したのは、こういった押井守のメッセージがあったからでしょう。ホントにとんでもない男である

ループ

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冒頭で荒廃した友引町で遊びほうけるラムやメガネたち…日光浴をするサクラ先生やしのぶ…といったように何か楽し気な雰囲気の中で呆然と立ち尽くしている諸星あたる。

いきなり難問をブッ込んできた演出で初見では全く意味不明。この冒頭は実は…本作のラストに流れるものを最初に持ってきたのである。

夢邪鬼が創った世界をぶっ壊し『現実』に戻るはずであったが…そこはまたしても『夢の世界』だった…というオチなのである。

この演出も相当な皮肉が入っているのだが…高橋留美子の作り上げたキャラを借りて押井守の世界を創った訳ですが…『はい返しますね』と戻したのはいいが…『あっ…そもそも貴方たちの創りだした世界はキャラが歳を取らない無限ループの世界でしたよね』といった皮肉を込めたオチとなっている。徹頭徹尾で原作に対し喧嘩を売っている様な作りになっています。

軍師かんべえ

2回目の鑑賞で…『そういう事ね』となる演出。色々な所に仕掛けがあって面白い作りになっています

総括

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押井守監督のメッセージ性がかなり色濃く出ていた作品で実はまだ伝えたい事は何点かあったのだが…ココで簡単に触れてみたいと思います。私が本作で最も好きなシーンが温泉マークとサクラ先生の『胡蝶の夢』

今見ても斬新な演出で世界がグルグル回っているといったループ感が漂っていました。このシーンを境に一気に押井守の世界観が姿を現しくる物語の起点となっています。そして幻想的な演出をされていたのが しのぶが路地裏に迷い込んでしまうシーン。

押井守監督が言うには…しのぶを表わしているのは本作を観ている鑑賞者という事らしい。このシーンから押井ワールドが展開されてしまうため困惑している鑑賞者を『迷い込んでしまった しのぶ』で表現したとのことだ。

押井が言うには特に演出に対し意味がある訳ではなく感覚で製作したとの事らしい。色々な考察がされているみたいだが…あまり深く考えなくていいみたいだ(笑)

感覚で創った演出と云えば…突然と始まるメガネの長尺での語り。押井守はこういった演出が好きなのであろう。全く以って意味はないのだが何度も繰り返し観てしまう魅力的な演出。

さてさて長々と本作の魅力を語ってみましたが最後に本作を堪能した後にオススメしたい映画があります…

『ビューティフル・ドリーマー』

『踊る大捜査線』の本広克之監督が押井守原案の『夢みる人』を映画化。『うる星やつら2ビューティフル・ドリーマー』を鑑賞している方に限定といった内容のため、いきなり鑑賞するのはオススメしない。しかし鑑賞済の方には絶対にオススメできる作品となっている。是非併せてご鑑賞してみてはいかがでしょうか…

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『うる星やつら2ビューティフル・ドリーマー』の『ビューティフル・ドリーマー』とは誰の美しい夢なのでしょうか…高橋留美子の夢でもラムの夢でもなく きっと押井守の『ビューティフル・ドリーマー』たったのでしょう…って所でオツカレっす!

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