『うる星やつら ビューティフル・ドリーマー』を100倍楽しもう

おはこんばんちわ(-ω-)/
管理人軍師かんべえです。
鑑賞前の予備知識!映画はもっと面白くなる。今回の作品はコチラ!
『ビューティフル・ドリーマー』鑑賞されている方は
鑑賞後レビュー『モーっと楽しもう』にどうぞ
目次
ビューティフル・ドリーマー

責任とってね
1984年:日本公開 監督:押井守 脚本:押井守 原作:高橋留美子『うる星やつら』 出演者:古川登志夫、平野文、鷲尾真知子 藤岡琢也、神谷明 他 音楽:星勝 主題歌:松谷祐子『愛はブーメラン』 製作会社:キティフィルム、スタジオぴえろ スタジオディーン 配給:東宝
1978年に『少年サンデー』で短期集中連載作品として掲載されたのが当時は大学生だった高橋留美子の原作の『うる星やつら』浮気者の高校生 諸星あたると、あたるを愛する一途な宇宙人美少女のラムを中心に友引町や宇宙や異次元を舞台にしたドタバタラブコメディ漫画。
高橋留美子が描く独特な世界観は多くの若者に圧倒的支持を受け一大ブームを巻き起こすことになる。
斬新なストーリーに次々と登場する魅力的なキャラクターは若者文化にも影響を与えるほどで…当時は あだち充の『タッチ』と共に『少年サンデー』の二本柱となるほどの人気作品となった。
1981年にTVアニメ化が決定。視聴率は20%前後と好調をキープしていたのだが、つねに半裸の少女が登場し下品な言葉を子供たちがマネをするという親からの苦情が絶えなかったため いつ打ち切りになるか分からない状態で番組が続いていたという(笑)
結果的に5年間に渡って放送される人気アニメとなり劇場用は6作品も公開されている。
今回ご紹介するのが劇場用2作品目となった『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』そして本作の監督がTVアニメシリーズでもチーフディレクターを務めていた…押井守だったのです。
まだ若手アニメ・クリエイターであった押井はデビュー2作品目にして良くも悪くも後世のアニメ界で伝説となる作品を作りあげてしまったのである…少しの知識だけで映画はもっと面白くなる!『ビューティフル・ドリーマー 』を100倍楽しもう!

賛否両論となってしまったが当時は全く内容についていけず…大人になって再び鑑賞した時にトリハダが立った作品でした

押井版『うる星やつら』
『私の「うる星やつら」ではありませんね…
人間性の違いですかね…』
完成試写会後に原作者の高橋留美子が言い放った感想は『わたしの作品を無茶苦茶にしやがって!』という怒りが込められていました。
これから『うる星やつら2ビューティフル・ドリーマー』をご覧になる方に先に忠告しておきたいのは…本作はあなたが思い描く『うる星やつら』ではない…という事です。
高橋が激怒したように本作は押井監督が『うる星やつら』をレイプしたかのような作りになっています。
押井守の主張が強すぎるため初見だけでの鑑賞では意味不明過ぎてかなりの確率で置いてけぼりを喰らってしまうため…本作が初めてであっても作品の輪郭が浮かび上がってくるようココでは押井守が抱いていた疑問や行動原理について説明していきたいと思います。
サザエさん方式
国民的アニメの代表と云えば『サザエさん』私が生まれる ずっと前から放送されているが…なぜかカツオ君は今でも小学生でワカメちゃんも大人になっていない。
サザエさんに限らず この手のアニメや漫画は登場人物が歳を取らないのである。その方が製作サイドにとって都合がいい事は理解できるのだが…押井守は この歳を取らない『サザエさん方式』を取るアニメに疑念を抱いてしまったのである。
同じ一年を永遠に繰り返す無限ループをヒントに考えられたのが学園祭の前日を永遠にループしてしまうという設定。案外と学園祭当日よりも準備している期間の方が楽しかったりするものである。
そんな楽しい日が永遠に繰り返されたら…と思うとワクワクしてしまうのだが現実ではそうはいかない。もしあるとしたら夢の世界だけなのである…しかし その世界は偽りでもあり『虚構』なのである。
押井は『うる星やつら』だけではなく日々を無限にループしているアニメや漫画は『偽りの世界である』と…つまり高橋留美子が創りだした世界観を高橋留美子のアニメの中で否定してしまったのである。
劇場版『うる星やつら オンリー・ユー』

時を1年前に戻します。1983年 TVシリーズのヒットを受け初の劇場版オリジナル長編アニメ『うる星やつら オンリー・ユー』が公開。
本来は別の監督が就任していたのだが途中降板したため残り5カ月という最悪な状態で押井守が引き継ぐことになりました。迫るスケジュールの中で『期限に間に合わせる』という事を念頭に置いた事で作品に対してのメッセージ性よりもTV版『うる星やつら』を劇場用としてスケールアップしただけのスペースオペラ的な作品に仕上がってしまった。
高橋留美子は自身が創り上げた世界観をアップデートしたような作品になった事で後に『オンリー・ユーが一番好き』と言わせるほど1作品目は高橋留美子にとっては思い入れが強い作品となっていたのだが…押井守はこの作品を『完全なる失敗作』と語っている。
みじめ!愛とさすらいの母
押井守は劇場版1作目の出来に不満を抱えながらTVシリーズの製作に戻るのだが…遂に押井はやってしまうのである。
アニメが漫画連載に追いつかない様にオリジナルのストーリーを時折に挟んで調整をする事があるのだが…押井は時間的に作り直しが効かないタイミングで『みじめ!愛とさすらいの母』という回を納品するのである。
『みじめ!愛とさすらいの母』は劇場版2作目の『ビューティフル・ドリーマー』のベースとなった作品でTVシリーズの中でもかなりの異色を放っていて…更に難解なストーリーにもなっている。
もちろんファンからの苦情が殺到してしまい押井守は局側から厳重な注意を受けてしまう事になるが…これは押井守の計画的な犯行だったのです。つまり この段階で押井守は次回の劇場版では『俺の自由に創る』と決意していて、その布石が『みじめ!愛とさすらいの母』だったのでしょう。
高橋留美子 激怒
そして遂に劇場版『うる星やつら2』が監督・押井守として始動するのだが…押井守は次々と上がってくるシナリオに対しボツを出し続けた事で一向にアニメ制作が出来ない状態が続いてしまう。
もうコレ以上は無理といった段階で押井守は自分が書いたシナリオを強引に通してきたのである。
それが『ビューティフル・ドリーマー』だったのです。しかも実際に劇場で公開された『ビューティフル・ドリーマー』の内容と異なっていたみたいだ…とんでもない親父である。
押井守はシャットアウトした状態でアニメ製作していた事で殆どの関係者は試写会まで内容すら明かされていない状態だったみたいです。
『私の「うる星やつら」ではありませんね…
人間性の違いですかね…』
試写会後に原作者である高橋留美子は…このコメントを残し会場を後にしたとのこと…高橋の関係者に『こういう事は二度とやらないで欲しい』と愚痴を溢していたらしく…これ以降は押井守は少しでも高橋留美子が関係するアニメの仕事はしていないらしい…そりゃそうだわ(笑)

とんでもない男ですよね。高橋留美子は20代だった事から押井守からナメられていたのかもしれません…こいつなら大丈夫だろう…みたいな

胡蝶の夢
『胡蝶の夢』とは…
胡蝶の夢 – Wikipedia
中国の宋の思想家である荘子の説話
夢の中で胡蝶としてひらひらと飛んでいた所、目が覚めたが、果たして自分は蝶になった夢を見ていたのか…それとも実は夢で見た蝶こそが本来の自分であって今の自分は蝶がみている夢なのか区別ができないことの例え
今、自分の周りで起こっている出来事は現実なのか…もしかすると夢なのか…現実と夢との見境がなくなったことは記憶としてはないのだが…『夢であって欲しい』『目覚めて欲しい』といった現状から逃げ出したくなった事なら幾度となく体験はしている。
しかし『夢』なのか『現実』なのか以前に私自身の存在が 創られていたモノだとしたら…人生そのものが『夢』もしくは誰かの『創造物』だとしたら…という事を考えた事はありませんか?
本作『ビューティフル・ドリーマー』は『胡蝶の夢』がテーマとして存在します。これは現実なのか…誰かが見てる夢なのか…もし同じ夢を全員で見ていたなら…これは現実になるのではないのか…
では…『夢』とは何なのでしょう。寝ている間に見る現実の様な体験も『夢』なら『願望』や『希望』の先にある目指すべきモノも『夢』であったりします。『現実』も現在に存在していることであったり…『願望』や『希望』に反する『事実』といった意味合いもあります。すごく抽象的で哲学的であるが…『胡蝶の夢』で荘子が語っていたのは 今あなたが体験している出来事は『夢』なのか『現実』なのか…それを証明するものは何一つないという事である。
虚構

『ビューティフル・ドリーマー』から11年の時を経て製作されたのが押井守の代表作とも呼べる1995年公開の『攻殻機動隊 ゴースト・イン・ザ・シェル』
押井守は作品の中で『現実と虚構』というテーマを必ず描いている。電脳化やサイボーグ化の技術が進んだ近未来で生身の部分をほとんどを失った草薙素子は現実に存在する者なのか…虚構なのか…どちらに価値があるのかを映画の中で問われるが…『人間は自分で見て、感じて、考えて、認識した結果の事象を脳が作り上げて生きている訳だから…夢でも現実でも価値は同じなんだろうなぁ』と押井は語っている様に大切なのは価値観に捉われない生き方をすることなのでしょう。
攻殻機動隊は後に『マトリックス』や『アバター』に大きな影響を与えていて…その攻殻機動隊は『うる星やつら2ビューティフル・ドリーマー』が元になっている。そうやって遡っていくと荘子の『胡蝶の夢』に辿り着くのである。

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サクラ

友引高校の美人保険医であると同時に巫女として強い霊感を持っている事で怨霊祓いも生業にしている。叔父に遊行僧でサクラより霊感の強い錯乱坊(チェリー)がいてTVシリーズでは共に登場する事が多い。
原作の第4話『あなたにあげる』で初登場して以来は『うる星やつら』の主要キャラの一人となるが今作の『うる星やつら ビューティフル・ドリーマー』では諸星あたるやラムに代わって友引町の謎を解明していく主人公的な立場になって問題にあたっています。
語尾に『~じゃ』『おぬし…』などの古風な口調で話す癖があり…お祓いの際は『はらたま…きよたま…』を連呼するが『祓いたまえ…清めたまえ…』の略で本作で荒廃した世界で彼女が経営する店の名前が『牛丼はらたま』となっていたように何故か押井守は『はらたま』という言葉が気に入っている様子(笑)

皆からは『サクラ』『サクラさん』『サクラ先生』と呼ばれ…性が不明となっている。『さくら』でも『桜』でもなくカタカナの『サクラ』が正解。

『ビューティフル・ドリーマー』を楽しむポイント

原作者の意向を無視して かなり好き勝手に創られた『押井版 うる星やつら』。
後に押井守の出世作となる『ビューティフル・ドリーマー』だが もちろん原作ファンからは相当なバッシングを受ける事になる。
私の感想としては『好き』か『嫌いか』というよりも『スゴイ』という感情が先に出てしまうのである。ちなみに私は原作ファンの一人であり毎週水曜の19時30分は『うる星やつら』を観るためにテレビの前でスタンバっていた人間である。
高橋留美子の世界観が好きで『めぞん一刻』や『らんま1/2』もかかさず観ていました。私は『怒り』というより当時は本作の意味が全く理解できずに数年後に衛星か何かで放送されていたのをビデオ録画して何度も見返したが押井守が本当に伝えたかった事を理解できたのは1995年の『攻殻機動隊』が世間的に話題になった時である。
当時はそれほどもまでに難解な映画であったが…あれから40年が過ぎようとしている今ならスンナリと理解できるのかもしれません。
何度も書くが…皆さんがイメージするドタバタ・ラブコメディを期待していると裏切られる形となってしまいます。疲れている時や忙しい合間に鑑賞するような作品ではない事は先に忠告しておきますので心が落ち着いた時や余裕がある時に是非ご覧ください…少しの知識だけで映画はもっと面白くなる!『ビューティフル・ドリーマー 』を100倍楽しもう!
映画観るならU-NEXT
それでは素敵な映画の世界へ行ってらっしゃいませ
