『ナイブズ・ナイト 名探偵と刃の館の秘密』をモーっと楽しもう

おかえりなさいませ(*- -)ペコリ
ココでは『ナイブズ・ナイト』徹底解析
完全ネタバレとなってますので
鑑賞前のお客様はご遠慮下さいませ。

ナイブズ・ナイト 名探偵と刃の館の秘密

『スターウォーズ/最後のジェダイ』のライアン・ジョンソン監督が完全オリジナル脚本で手掛けた『ナイブズ・ナイト』。『007』のダニエル・クレイグや『キャプテン・アメリカ』のクリス・エヴァンスを始め豪華キャストが終結。息も付かせないハイテンション・ノンストップ・ミステリーに相応しく手に汗握る作品となっています。『モーっと楽しもう』では独自の視点で徹底解析しておりますので完全ネタバレとなっています。まだ鑑賞されていない方はコチラの鑑賞前記事にお戻りください。

ベタな設定からの唯一無二の展開

如何にもな豪邸で…如何にもな大富豪が亡くなり…如何にもな名探偵が現れ…如何にもな遺産相続争いが繰り広げられる。ミステリーファンなら『何度も見たよ!』という『ベタベタな設定』。ただ水戸黄門の印籠シーンのように何度見ても期待が膨らんでしまうベタ設定でもある。ホームズやポアロが如何にも出てきそうな洋館で事件は起こるが今回登場するのは名探偵ブノワ・ブラン

テニス殺人事件を解決した『最後の紳士探偵』。この名探偵が私たちが今までに見た多くのミステリー作品をも超越する唯一無二の展開へと誘ってくれます。

飽きさせない展開

ハーランの85歳の誕生パーティーの翌朝に彼は家政婦のフランにより遺体として発見され警察は状況から自殺と断定する。しかし名探偵ブノワ・ブランの元に匿名でハーラン自殺の再捜査の依頼が札束と共に送られてくることで物語は始まります。

ハーラン死亡から1週間後に再びハーランの家族が屋敷に呼ばれ名探偵ブノワ・ブランに事情聴取を受ける事になります。ここまでの展開は一般的なミステリーの『フーダニット形式』。次々と事情聴収を受ける家族は嘘ばかり。回想シーンを上手に挟む事でブランは家族の矛盾点に気付く演出がされていました。長女のリンダは『父の手を借りずに0から自分の不動産会社を設立した』と豪語していましたが、実際はハーランの援助で会社を設立したため会社の権利はハーランにある…と後に息子のランセムが語っています。

リンダの夫リチャードもハーラン氏の部屋で浮気現場の画像を見せられ揉めていた事をブノワに誤魔化していました

次男のウォルトはハーランにクビを宣告された事。ジョニも娘の学費を二重取りしていたのがバレて援助を打ち切られた事。家族全員が事情聴取でを付いていました。しかし名探偵ブノワ・ブランは全ての家族の嘘を見破っていたのです。

では…いつ?どうやって?家族の嘘を見破ったのか…それは後に語っていきたいと思います。

そして最後に事情聴収を受ける専属看護師のマルタの回想から一気に展開がシフトします。

倒叙形式にシフト

専属看護師のマルタはハーランに間違って大量のモルヒネを投与した事に気づく。
ここまで『フーダニット形式』で進んでいた展開だったのだが…序盤で『犯人を明かす』という、まさかの展開。一気にマルタが如何に犯行を隠すのか?ブランが如何に真実を突き止めるのか?倒叙形式の展開にシフトします。

ビデオテープに磁石を当てているのが分かります。今の若い方には分からないと思いますが、ビデオテープに磁気を当てると映像が映らなくなります。

足跡を隠したり…折れた壁枠を投げたり…と必死に証拠を隠すマルタ。これまでにマルタが見せていた優しい心があったせいか…『頑張れマルタ!』と思わず応援したくなるほど私はマルタに感情移入していました。

物語の後半にマルタはブランに真実を告げるのだが…ブランは『そんな事は最初から分かっている』みたいな顔をして『自分に捜査依頼をした謎の人物がこの事件のカギ』だと言い…そしてココから再び『誰が依頼者なのか?』という『フーダニット形式』に戻ってしまします。

『フーダニット形式』⇒『倒叙形式』⇒『フーダニット形式』の流れこそが最後まで手に汗にぎる飽きさせない展開を演出した正体なのです。

倒叙形式はライアン監督のトリック

『フーダニット形式』のミステリーの途中に『倒叙形式』を挟むという唯一無二の展開を演出したライアン監督。この二つの形式を組み合わせる事で専属看護師マルタの心情がよりよく作品に表われていました。一般的なミステリーだと、どうしても探偵役の推理が中心となり犯人が明かされるのは最後の最後になってしまうため謎解きがメインとなってしまうのだが途中で『倒叙形式』になったことで、この作品の主役がマルタに移り変わります。おそらく皆さんも同じ感想をお持ちだと思いますが…『マルタ可哀そう』『マルタは悪くない!』『マルタ頑張れ!』といった感情が芽生えたのではないでしょうか?そしてクライマックスでは『マルタ…良かったね』という安心感さえ感じました。そう!この感情を生ませたのがライアン監督が私たちに向けたトリックだったのです。

名探偵ブノワの凄さ

『倒叙形式』を途中で挟んだこともありマルタに主役の座をシフトされた事でブノワの推理力の凄さが薄れてしまった感はあるが、実はブノワはメチャクチャ凄い名探偵なんです。

マルタ瞬殺

ブノワはマルタの靴に血がついていた事でハーランの自殺に関与していると気付いたと言っていましたが…マルタと初対面の時に思いっきり靴を見ていました。つまりココでマルタの関与に気付いていたのです…まさに瞬殺。

家族の嘘を見破る

ブノワは家族の事情聴収中に疑問を抱いていました。リチャードの『彼女には私から伝える』。ウォルトの『怪我した子犬の様にシュンとしていた』。ジョニの『学費の件で行き違いが』。この時点で『何か、この家族たちは隠している』と…

そしてマルタと会った時にマルタの靴を見て『マルタは自殺の現場にいた』と判断したことで家族の疑念が強くなったのです。

マルタは人型嘔吐式嘘発見器という事はハーランの自殺説は事実という事。そしてマルタが自殺現場にいたという事はハーランがマルタを庇って自殺したという事になります。では何故?ハーランがマルタを庇ったのか…はハーランは家族にではなくマルタに遺産を譲る決意をしていたという事。そのために家族の身辺整理をしていた…という推理を一瞬で考え、『浮気』『解雇』『援助打ち切り』に辿り着いたのではないでしょうか…ただココまでは疑念止まりですが、マルタに確認した時に疑念が確信へと変わった…という私の邪推です。

ラムセス秒殺

ラムセスがブノワに初めて会った時に『CSI:KFC』と呟いていました。『CSI:KFC』とは南部出身をバカにする差別用語との事。初めて会って、まだ会話さえしていないブノワに対し、この南部出身者に対する差別的な発言をした事でブノワはラムセスが『匿名の依頼者』だと気付いてしまったのです…まさに秒殺。

いかがだったでしょうか…途中で主役をマルタに取られてしまっただけに彼の名推理の場面が事細かく説明されていませんでしたが…しっかりと推理していました。さすが『最後の紳士探偵』

アメリカの格差社会

本作の裏テーマも呼べるものが『アメリカの不法移民問題』。作中でもパーティーの夜に熱いバトルが繰り広げられていました。米国のトランプ大統領は再び不法移民に対し強硬姿勢を取り始め国外退去させると言っています。更にメキシコとの国境に『壁を建設』と再び強調し始めている。明らかに目的は『アメリカは白人国家』と訴える事で白人保守層の支持率を高めること。作中でもリチャードが『彼らは法を犯した…同情するが、報いは受けるべきだ!』と主張していました。

スロンビー家の家族は『マルタは家族同然』と一見は優しい言葉をかけてはいるが、リンダは『エクアドル移民』だと言い、リチャードは『ウルグアイ移民』と言い、ランサムは『ブラジル移民』と皆がバラバラの事を言っている。家族同然の存在と言っているのにマルタがどこの出身なのかを把握していませんでした。結局は上から見下ろすような目でマルタを見ていたという事ですね。

ナイブズ・ナイトが意味するもの

『Knives Out』とは『向けられた多くの刃』という意味。この刃は誰に向けられたモノなんでしょうか?

ブノワが事情聴収をする時にスロンビーの家族たちは1000の刃のオブジェの中心ではなく少し外れた位置に座っていました。家族全員が…

刃が意味するのはスロンビー家全員という事になります。それでは1000の刃のオブジェの中心に座っていた人物が一人だけいます。

白人のスロンビー家という刃の矛先は移民者のマルタに向けられています。『アメリカは白人の国だ!』と勘違いしている今のアメリカを揶揄しているかのような演出をライアン監督は狙っていたのではないでしょうか…

『屋敷』は『アメリカ』を意味するメタファー

遺産を相続したマルタに対しラムセスは『俺は力ずくでもこの家を守る、我々が持って生まれた先祖代々の住処だ!』と脅しをかけるとブランが『くだらない…ハーラン氏が80年代にパキスタン人から買った家だ』と一蹴。これは『白人も元々は移民だろ!』と捉えられます。この屋敷が表していたのは『アメリカ国』そのもので、スロンビー家(白人)が後から入ってきたのに他の移民者は受け入れないのか?白人保守層の人たちは、この作品を見てどう思ったのでしょうか?それでもトランプを支持しますか?

My home、My rule、My coffee。

最高のラストシーン!語る事はありません。このシーンが全てです。

アガサ・クリスティーに捧ぐ

もの言えぬ証人

この作品を記事にするにあたり、すこしだけアガサ・クリスティーの事を調べていた時に面白い作品を見つけてしまいました。

『もの言えぬ証人』1937年に発表された『エルキュール・ポアロ』シリーズの長編推理小説。

~あらすじ~
ポアロは2か月前に死去した老婦人エミリイが差し出した命に危険が迫っている内容の手紙を受け取る。彼女が死の直前に作り直した遺言書には家政婦に全財産を残すことが記されていたため、遺族の憤懣と関係者の疑念が満ちる中、彼女の愛犬であった「もの言えぬ証人」こと白いテリア犬のボブは何かを語ろうとしていた…

似てません?家政婦に全財産を残す…って似てません?ただストーリーは全然違いましたけど設定が一緒ですよね。そして、もう一つ似ていたのが『もの言えぬ証人』では愛犬のボブがボールを咥えて自分のカゴに戻る修正が謎解きのヒントとなるのですが…『犬がボールを咥える』って確か…

野球ボール

リチャードが浮気の内容の手紙を証拠隠滅する時に何気に持った野球ボールを外に投げてしまいます

そのボールを偶然にブノワが拾い…更に庭の方に投げると…

犬がボールを咥えてリンダのそばに…そしてリンダはボールを元の部屋に返しに行った際に手紙を発見する。

以前から『あぶり出し』で手紙のやりとりをしていたリンダは浮かび上がってくる文字でリチャードの浮気を知りました。
『もの言えぬ証人』の犬は事件解決のヒントを与えましたが…このワンちゃん達はリチャードの浮気事件を解決しましたね(笑)

『軍師かんべえ』の邪推

この記事を作成するにあたり本編を5-6回は鑑賞したのですが…疑問というか…未だに謎と思える箇所があります。

マルタの方が碁が強い

ここからは軍師『かんべえ』の完全な邪推となっていますので…暖かい気持ちでご覧ください。

ハーランは遺産を全てランサムに譲るつもりだったのではないでしょうか?『祖父に碁で勝てるのは俺だけかと…』とランサムが呟いていたようにハーランはランサムの頭脳の高さを評価していたのだと思います。おそらくランサムに『遺産を譲るのはお前だけだ!』と伝えていたのでしょう。ハーランは家族や家柄を守るといった事よりも自分が創り上げた作品を大事にしていたと思われます。ウォルトの映画化の提案を拒んでいたのも作品が他の手によって作り変えられるのが我慢できなかったのだと…しかしランサムより『碁に強い人間』が現れたのがランサムさえも遺産相続から外された理由だったのでしょう。

マルタは頭が良い

一般的に言われている囲碁で必要な能力は・大局観・創造力・集中力・精神力・思考力。世界的なミステリー作家だけにハーランは、この5つの能力に長けていたはず…そしてハーランを上回るのがランサム…その上にマルタが君臨していた…という事は、この女は相当に頭がキレるはずである。もしかしたらブラン以上に…

自分を守るために付いた嘘

車での逃走劇をした後にブノワが『逃げろと言ったのはランサムさんの指示?』と尋ねられた時にマルタは躊躇なく『はい』と答えています。そしてその後にジュースカップに嘔吐していました。何度見返してもランサムは一言も『逃げろ』と指示していませんし、勝手に車を出したのはマルタ本人でした。作中に付いた嘘は殆どが『優しさ』からよるものだったのに、この時だけは自己防衛のために他人を突き落すような嘘を付いていました。

もしかしたら…私たちは全員マルタの手の上で泳がされていたのかもしれません。

まぁ…私はマルタを信じますがね…( ̄▽ ̄)

総括

本作の展開はまさに前代未聞の流れで途中で倒叙形式になった事でマルタに思いっきり感情移入できたのが面白さの要因。いや普通に可愛いやんアナ・デ・アルマス。

3時間は見てられますね(笑)なんかボンドガールになったみたいですから…またダニエル・クレイグと共演という事ですね。今度は映画館で観てみたい。って総括ではこの娘の話しかしてないですけど…以上

今回も長文失礼いたしました
それでは…

またのお越しをお待ちしております

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