『パラサイト 半地下の家族』モーっと楽しもう
おかえりなさいませ(*- -)ペコリ
『パラサイト 半地下の家族』の
徹底解析 完全ネタバレとなっております
観賞前のお客様はご遠慮下さいませ
本記事は 『パラサイト 半地下の家族』感想レビューとなっておりネタバレが含まれております。
本編未鑑賞の方は予備知識編『100倍楽しもう』の記事をご確認の上で再度お越しください
目次
『パラサイト 半地下の家族』
2019年:韓国、フランス、カナダ、日本公開 監督:ポン・ジュノ 脚本:ポン・ジュノ、ハン・ジンウォン 製作:クァク・シネ、ムン・ヤングォン、ポン・ジュノ 他 出演者:ソン・ガンホ、イ・ソンギョン、チョ・ヨジヨン 他 音楽:チョン・ジェイル 撮影:ホン・ギョンピョ 編集:ヤン・ジンモ 製作会社:パルンソンE&A 配給:CJエンタテイメント ビターズ・エンド NEON
韓国の『格差社会』をテーマにコメディ、サスペンス、ラブストーリーに社会派といった数多くの要素が含まれている見ごたえのある作品。
序盤では笑わせてくれる展開であるがラストでは社会問題に向けてのメッセージが問いかけられてきます。
本作を通して格差社会にいかに取り組んでいくべきかを考えていく時期に来ているのではないでしょうか…といったようにココでは『パラサイト 半地下の家族』を既に鑑賞しているという前提で記事を作成しております。ネタバレ注意となっておりますのでご了承ください。
面白かった!で終わらせてはいけない作品。完成度が高いだけにストーリーで満足してしまうが、隠されたメッセージこそが重要なんです。
『格差』を『階段』で表現
最大のテーマでもある『格差社会』は韓国社会が最も問題視している差別の一種。
良い教育を受けて、良い大学に入り、良い就職先に勤める…そして良い妻に出会い我が子に良い教育を受けさせる…という無限ループを富裕層の中だけで延々と繰り返していく。
どこに貧困層の人たちが付け入る隙があるのだろうか…しかし半地下で生活を強いられている者達はいつしか富裕層が作り出す無限ループの中に入ろうと必死に生きているのだが染み付いた匂いは消し去ることはできませんでした。
そんな富裕層と貧困層の間にある決定的な隔たりを表現していたのが階段や坂道。高低差を作り出す事によって貧富の差を現していました。
物語は半地下のシーンから始まります。半地下とは北朝鮮の襲撃に備え作られた防空壕であったが近年は北朝鮮の脅威が薄れてしまった事から低所得者が住居として借りているケースが多くキム一家の韓国社会での位置づけが見えてきます。
半地下での生活のシーンではWi-Fi泥棒をしたり…家中が消毒まみれになったり…ピザの箱を作る内職をしたり…生きてくだけで精一杯。それでも知恵を絞って逞しく生活していました。
半地下での生活シーンが私には非常に印象的で貧しいながらも…この家族が一番幸せそうに見えた瞬間でもありました。
幸せとは一体なんなのでしょうか…豊かな暮らしとは、お金は私たちの生活を潤してくれるツールであって幸せにしてくれるツールではない事を実感させてくれます。もちろん必要な物なのでしょうが固執してしまうと大切な物が失われてしまうものでもあります。
キム一家は高台にあるパク家に寄生する為に階段や坂道を上がっていく事で半地下の地位から抜け出そうとしていました。階段や坂道を登っていくシーンは地位が上がっていくメタファーでもありますが所詮は偽りの地位で簡単に崩れ去る事になります。追い出したはずの元家政婦が忘れ物を取りに来た事でキム一家のパラサイト作戦がバレてしまう事に…
元家政婦の登場で まさかの急降下…ここからは階段を下って…下って…下って…の連続。再び半地下の位置まで落とされてしまいました。
半地下まで戻ったキム一家だったが大雨で辺り一帯は大洪水。高台から流れ込んでくる雨水が貧民層の町を水で覆ってしまい最悪の状態で元の場所まで落とされてしまった。
水は上から下に流れ落ちてくる…
洪水で被害にあったのは下層に住んでいる住人で高台の富裕層は『雨が降ってPM3.5が収まったわ!』なんて呑気な事を思っている。
日本でも同じことだが国の政策は富裕層のための政策であり…犠牲となるのは下層の人たち。こういった高低差を『格差社会』としてあらゆるところで表現されていた事に心痛い思いで鑑賞していました。
水の使い方が上手で高台から流れ落ちてくる水は下層までくると泥水になっていました。
ポスターに隠された謎
目に太線を入れていたり…謎の足が写っていたり…と不気味と思っていたのだが鑑賞後に『そういう事ね…』と妙に納得していました。ポスターにも監督のメッセージが残されていたのです。
・『格差社会』は全ての韓国人が悪
・謎の足は『ギジョン(妹)』の足
ポン・ジュノ監督
『この物語にわかりやすい悪人は登場しません。誰一人、悪い人はいない』
キム家は身分を偽っていたが一家も生きる事に精一杯で決して悪人ではない。追い出した若い運転手や地下に閉じ込めた夫婦の心配をしていたり…貧しくても『優しさ』を失っていないセリフが随所に見られていました。
もちろんパク一家は完全なる被害者ではあるが富裕層であるがために貧しき者を理解できず心ない言動を度々 犯している
では…誰が悪いのか?監督は『この物語に悪い人はいません』と言っています…『この物語に…』と
この物語の悲劇を作り出したのは『格差社会』
格差社会を作り出したのは国民全員なのでは?
という理由でポスターに登場する人物全員に目を隠す様な太線を入れたのではないでしょうか…白と黒の太線は被害者パク家 加害者キム家の区別化ですが!もう一か所…区別化されている箇所に気付いてますか?
キム一家は裸足、パク一家は靴を履いています。見切れている足は『裸足』です。この足はキム一家の誰かの足なんです。見た感じ女性の足ですよね…しかも若そうです。キム一家の中で残念な結果になったのは…ギジョン。この足はギジョンの足だったのです
すでにポスターには本作の結末が語られていた…という監督の遊び心が仕込まれていたわけです
キム家が裸足だったのは侵入者を現していたのでしょうか…これは完全に私の妄想です。
キム一家のスキルがスゴすぎる件
この映画で笑えたのはキム家がパラサイトするためにスキルを発動する場面が最高に面白い
全てはキム・ギウの機転の速さから始まりました。家庭教師の面接ではパク家の長女ダヘの心を瞬殺。脈を測るフリをして…セクハラ?? これでダヘはギウに恋心を抱いてしまう…もちろん面接は合格!
更にギウはファインプレーを演じる。パク家の弟ダソンの自画像を見て『彼は天才かも…』とヨンギョに思わず漏らすとスグに反応が…『美術の家庭教師を探しているの』願ったり叶ったり…で妹のギジョンを送り込む事になります。
キム一家の中で最も高いスキルを持つギジョン
あの腕白小僧のダソンを僅か1時間足らずで瞬殺。見事に短時間で飼いならしてしまった
ダソンは母親の愛情に飢えていたのでは?
本編中に母親のヨンギョは一度しか息子のダソンに触れていませんでした。ダソンが失神してしまった時しか…母親ヨンギョは普段から子供たちとのスキンシップを取っていなかったと推測されます。
そんなダソンの心のスキを一瞬で見抜くギジョンは絵を書く時にも抱っこしながら書いてましたよね…これは推測だが…ダソンが1年生の時に幽霊を見たという話も本人から聞いていたのでは?それを心理学という面から気付いたように振舞い、母親のヨンギョに告げる事で母親も瞬殺してしまいました。
更にギジョンは運転手をクビにするため車の中にパンティーを置いていくという作戦を取っています。
パク家の主人のドンイクはギジョンの下着を見つけ俺の車でカーセックスをしていると勘違いした事でギジョンの思惑通りに運転手が解雇されることになってしまいます。
次に送り込まれたのは新運転手の父ギテク
ギテクは元運転手という経歴もありドンイク社長から『最高のコーナリング』と絶賛されるほどの腕前。そして父ギテクの見せ場は次に送り込まれる母親の為に現家政婦を結核であると思い込ませる大作戦
作戦は見事に成功し母チュンスクも潜り込むことができます。そして短期間でメイドの仕事をこなしています。4人に共通している事は騙して仕事には就いたが…想像以上の働きぶりでちゃんと一所懸命に仕事をしているんですよ。
序盤の最大の見せ場のパラサイト大作戦!ココは純粋に楽しんでください。
山水景石
序盤で友人ミニョクに貰った開運をもたらす山水景石。この石が何を表しているのか?
山水景石はギウにとっての『未来』『希望』
ギウにとってミニョクは親友でもあり、自分もミニョクの様になりたい…と願う憧れの存在でもある。ミニョクから貰った石は自分が彼の様になれる『未来』でもあり『希望』だったのではないでしょうか…
洪水の中 キム一家が家の中から持ち出した物は父ギテクは母チュンスクのメダル。妹ギジョンはトイレに隠していたタバコ。そしてギウは山水景石を持ち出しています。
ギテクはメダル(過去)を選び、ギジョンはタバコ(害)を選び、ギウは山水景石(未来)を選びました。
過去を選んだギテクは『絶対に失敗しない計画は無計画だ』と希望を捨てたセリフを言っています。最後は地下室にこもってしまいます。
害を選んだギジョンは地下室の男グンセに刺され亡くなります。
未来を選んだギウは地下室にこもった父を救い出すため金を稼ぐ事を誓います
洪水の時に選んだ物が3人の…その後を暗示していましたね
格差の『匂い』
作中で度々 出てくるキーワードが『匂い』。最初に気付いたのがパク家のダソン君で『同じ匂いがする!』と運転手のギテクと家政婦のチュンスクから更に家庭教師のギジョンからも同じ匂いがすると…この時点でダソン君だけが違和感を感じていたのではないでしょうか?
次に『匂い』のキーワードを言ったのがパク家の主人ドンイクで運転手のギテクの『匂い』が『臭い』と…直接的な言い方ではないが…ディスっています。この発言からギテクから笑顔が消え去ってしまいます。
決定打となったのは倒れた地下室の男の臭いに思わず鼻をつまんだ瞬間…ギテクがブチ切れてしまいます
匂いをディスられたからブチ切れた?
たしかに『匂い』が原因でブチ切れたのだが…そんな単純な事ではないのだと感じました。
『匂い』=『格差社会』と考えた時に真っ先に『匂い』に気付いたのが息子のダソン君。つまり…まだ幼い子供にさえ『格差社会』を感じさせる世の中になった事への怒りだったのではないでしょうか
これはポン・ジュノ監督が格差社会に対し
こんな世の中を作った全ての大人たちに
『こんな社会でいいのかよ?』
…というメッセージだったのだと思います。
総括
人として『差』というものは私たちの中に埋め込まれているメカニズム。大人たちは『差別はダメ』とかキレイ事を言うが『競う』ことで育ってきている以上は無意識のうちに比べてしまい『差』が生まれてしまう。半々地下くらいで生活している私でさえもパク社長になってしまっているのかもしれません。正しい答えなんかは分かりませんが…少し格差社会に対し考えさせられました…ってところでオツカレっす!