『アメリカン・スナイパー』をモーっと楽しもう

軍師かんべえ

おかえりなさいませ(*- -)ペコリ
『アメリカン・スナイパー』
徹底解析 完全ネタバレとなっております
賞前のお客様はご遠慮下さいませ

本記事は 『アメリカン・スナイパー』 の感想レビューとなっておりネタバレが含まれております。
本編未鑑賞の方は予備知識編『100倍楽しもう』の記事をご確認の上で再度お越しください

アメリカン・スナイパー

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2015年:アメリカ公開、日本公開
監督:クリント・イーストウッド
脚本:ジェイソン・ホール
原作:クリス・カイル
   『ネイビー・シールズ最強の狙撃手』
製作:クリント・イーストウッド、ロバート・ロレンツ
   ピーター・モーガン、アンドリュー・ラザール
   ブラットリー・クーパー
出演者:ブラットリー・クーパー、シエナ・ミラー 他
撮影:トム:スターン
編集:ジョエル・コックス、ゲイリー・D・ローチ
製作会社:ヴィレッジ・ロードショー・ピクチャーズ
     マッド・チャンス・プロダクション 他
配給:ワーナーブラザース

2015年度のアカデミー賞で作品賞・主演男優賞を含む6部門にノミネートされたクリントイーストウッド監督の『アメリカン・スナイパー』全米では戦争映画として『プライベートライアン』の興行収入No.1の記録を17年ぶりに更新。イラク戦争で伝説の男と呼ばれていたクリス・カイルの半生を描いた作品となっている。2011年に終戦となったイラク戦争はアメリカ人にとって最も記憶に新しい戦争であるはずなのに…本作でも語られているが『本当にアメリカはイラクと戦争をしているのか?本国に帰れば戦争の話題すらテレビで流れていない…』とアメリカ本国ではイラクと戦争をしているという実感がいまいち薄かったみたいだ。しかしコレは致し方がないのである。政府が情報操作をして戦争の話題を国民に伝える事を制限していた訳ですから…なぜならイラク戦争は『大義』がなかったのだから…

https://www.huffingtonpost.jp/kenji-eda/iraq-war_b_8248150.html

イラクが大量破壊兵器を保有しているというアメリカの強引な主張から始まった戦争。結果としてアメリカの大フライングに終わってしまう。年月が経つにつれアメリカが主張していた事の雲行きが怪しくなっている状況を国民にわざわざ情報を降ろすはずがありません。過去にもアメリカは強引な主張の元で戦争を繰り返し起こしています。太平洋戦争でも日本に対し経済封鎖をしたり朝鮮戦争やベトナム戦争は冷戦が産んだ社会主義国との代理戦争。湾岸戦争でも他国間で起こった石油問題に対し武力介入した結果である。今までの戦争もかなり強引であったが…それでも一応の『大義』が存在していた。しかしイラク戦争に関しては全く『大義』が存在していない。だからイラクで起こっていた細かい情報がアメリカ国民に伝わっていなかったため戦争の実感が薄かったのではないでしょうか…

https://www.cinemacafe.net/feature/img/american/main.jpg

現在でもイラク戦争の真偽に対し論争が繰り広げられている状態の中で2014年に公開された『アメリカン・スナイパー』主人公のクリス・カイルは蝕まれるようにPTSD(心的外傷後ストレス障害)にかかってしまう。本作を通してアメリカ国民はイラク戦争がどういった戦争であったかを再認識できたのではないでしょうか…だからこそ本作は『プライベートライアン』を超えた大ヒットを記録したのだと私は思っている。そして大ヒットした要因がもう一つあります。

https://orga-inc.jp/outline/about-chris-kyle/

本作を既に鑑賞済みという前提で話しているが…主人公のモデルでもあり原作の著者でもあるクリス・カイルは撮影期間中に同じPTSDで苦しんでいたイラク戦争の帰還兵によって射殺されるという事件が発生してしまう。あまりにもタイムリーな事件だけに製作サイドも公開中止を考えたはずである。しかし公開に踏み切ったのはクリスの妻であるタヤの協力があったから。製作サイドは最初の脚本には予定になかったエンディングを追撮する事で作品を完成させたのであった…といったようにココでは『アメリカン・スナイパー』を既に鑑賞しているという前提で記事を作成しております。ネタバレ注意となっておりますのでご了承ください

軍師かんべえ

最後の最後に『え??死んだの?』しばらく放心状態になっていました。すぐにググって『あっ…死んでる』ってまた放心状態になってしまいました。

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描かれていたのは…リアル

https://ham-ichi.at.webry.info/201507/article_12.html

2015年に公開され一気に戦争映画の代表作となった『アメリカン・スナイパー』この手の映画に付きまとう論争が本作でも巻き起こってしまう。戦争を賛美したアメリカ万歳映画なのか…PTSDに侵された帰還兵の苦悩を描いた反戦映画なのか…答えはさすが名監督のクリント・イーストウッドといった所で本作は鑑賞する人の視点によって戦争賛美にも…反戦映画にも…どちらにも捉えられるよう我々に委ねるように作られている。本作で描かれていたのは賛美でも反戦でもなく戦争のリアル(現実)が描かれていたのです。だから意見が分かれるのは至極当然なのです。

伝説の男

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イラク戦争では4度の従軍で160人を射殺した凄腕のスナイパー。軍内部では『レジェンド』と呼ばれ多くの叙勲を得てアメリカ軍史上最高の狙撃手となっている。しかし敵側からは『悪魔』と呼ばれ懸賞金まで懸けられていたらしい。この辺のくだりがリベラル派からすれば『戦争賛美』となってしまうのか…戦争とはいえ多くの命を奪ったのにもかかわらず英雄扱いされ勲章まで授かり昇進を決めている。更に家族の反対を押し切り4度も戦地に向かう男の異名が『レジェンド』な訳ですから…そして海軍特殊部隊ネイビーシールズの仲間のためなら死をも恐れないといった描かれ方も更に戦争賛美の拍車をかけたのかもしれません。

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クリス・カイルの狙撃は多くのアメリカ兵を助ける結果となったのだが…一つとして狙撃の成功に対しカタルシスが描かれていない。中には難易度の高い狙撃ミッションもあったはずだが成功させた悦びどころかクリスの心は徐々に蝕まれていってしまう。クリスの高度な狙撃に感動する仲間に対し『俺に触るな』と明らかにイライラを募らせている。これは『大義のない戦争』という事をクリス自身も知っているからである。一人の兵士が戦争を通じて闇に落ちていく過程を本作では見せている…と感じれば反戦映画となってしまう。本作で描かれているのは戦争という生々しいリアルであり…賛美とも反戦とも色付けはされていない。あなた自身がどう感じたか…と製作サイドが私たちに答えを委ねている作り方になっています。ただ私は胸糞悪い映画だと思いました。

二人だけの世界

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クリス・カイルの『ネイビーシールズ 最強の狙撃手』が原作となっている『アメリカン・スナイパー』の中で映画版のオリジナルとなっていたのが敵スナイパーのムスタファという人物で云わば脚色部分となっている。ムスタファが実在していたのかは不明だがモデルとなった人物はいるのかもしれない。ただクリス・カイルのインタビューの中にムスタファとなる好敵手の存在との対峙はないのでイーストウッド監督の創作となっているが…このムスタファとの対決も賛否が分かれる事になってしまう。リアルで描かれていた本作の中でムスタファとの対決の演出だけがどこか現実的でなく超越的な世界になってしまう。しかし私自身はこの演出はに票を入れたい。

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『アメリカン・スナイパー』の中でのクリス・カイルの苦悩とは一体なんだったのだろうか…家族と離れている事なのか…戦場と本国との生活のギャップなのか…仲間の死なのか…もちろん彼の苦悩はどれも当て嵌るものなのかもしれない。しかし彼が苦悩していた事はスナイパー特有の何かがあったのでしょう…軍内では『レジェンド』と英雄扱いされているが実際に狙撃手というのは相手に気付かれない距離から狙撃するという…自分の安全は保障されている位置からの一方的な卑怯な攻撃となってしまう。敵とは云え無防備な相手への狙撃だけに普通の戦闘以上にメンタルがやられていくのでしょう。この苦悩が理解できるのは同じ世界観にいるムスタファだけだったのかもしれません。最後の対決でクリスは他の隊員が『見える訳がない』という距離からムスタファの存在に気付いてしまいます。この演出がリアルではない…という事になるが私は二人だけが理解できる世界だからこその演出だと思っている。ただこの演出が全体のリアル感を少しだけ削いでしまったという意味で否だと云う意見も十分に理解できます。まぁ後…ライバルの存在っていた方が映画的には面白くなるので私はやっぱり賛の方で推したいと思います。

PTSD

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『アメリカン・スナイパー』でリアルに描かれていたのは戦場での出来事だけではなくクリス・カイルが徐々にPTSD(心的外傷後ストレス障害)に蝕まれていく姿が最も印象的であった。原因不明の高血圧であったり、幻聴、幻覚に悩まされる事になるクリス。普段の生活音でさえも戦場から帰還したクリスにとっては銃撃の音に聞こえてしまったり何かと警戒心が強くなっている。心が戦場に取り残されていると妻のタヤに指摘されていました。戦場で160人以上の命を奪ってきただけに他の兵士以上に心の病は深かったのかもしれません。次第に病状は悪化していき子供とジャレ合っていただけの犬を殴打しようとしてしまいました。そして私がクリス・カイルに最も恐怖したのが…

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冗談とはいえ愛する妻のタヤに銃口を向けていた事である。しかも撃鉄を起こしてしまっているので、もし弾が入っていたならトリガーを引くだけで発砲してしまう状態となっている。隣に息子と娘がいるのにも関わらずクリスは本物の銃を玩具にしていたのである。戦場の兵士同士では通じる冗談でも家族にやる冗談ではない…コレもPTSDの症状の一種なのでしょう。クリスは戦場と家庭の見境がなくなっていました。監督のクリント・イーストウッドの演出のスゴさが感じ取れるシーンでした。普通に見てると、やっと心が家族の元に帰ってきたんだ…と勘違いさせるような家族との絆を感じてしまうシーンに見えるが…実はクリスのPTSDはまだ治っていなかったというオチになっている。戦争によって刻まれた傷は早々に治る訳がない…というリアル(現実)を私たちに突き付けている演出になっていた気がしたのは私だけでしょうか…

軍師かんべえ

反戦?賛美?と言うよりも私の率直の感想は戦争の怖さを改めて感じたという事。終戦したから戦争が終わったという訳ではなく…心に傷を負った兵士は一生を費やして戦わなければいけないんだ…

無音のエンドロール

https://renote.jp/articles/4259

クリス・カイルの死は本作を撮影している期間に起こった不測の出来事であった。クリスは除隊後はPTSDに悩まされるも家族や周りの人々の助けもあり徐々にではあるが回復へと向かっていくことができた。彼の経験を活かして同じPTSDで悩む帰還兵の手助けができたら…という想いからクリスは社会復帰に向けた支援を積極的に活動していたのだが…PTSDで悩む元海兵隊員によって射殺されるという事件が起こってしまう。この衝撃的な不足な事態に本作が予定していたエンディングとは全く違う結末を描く必要になってしまいました。そしてクリント・イーストウッドはエンディングロールを無音にするという選択をしたのです。この無音の意味というのは…

貴方が思い描く曲は…

http://goyaku.blog45.fc2.com/blog-entry-808.html

コレは人それぞれなのかもしれないが映画を観終わった時にエンドロールが流れ出したら貴方はどうしますか?映画館であれば…早々と席を立ち劇場を後にする人もいれば…一応は最後まで席にいるが携帯をいじり出す人…友人と喋りだす人…ちなみに私は映画ブログ記事を書いているという立場からエンドロールが流れ出したら目を閉じて曲を聴きながら映画の復習をしています。コレは自宅で鑑賞している時も同じで初見の作品は必ず復習タイムになっています。何が正解という訳ではないが…私同様にエンドロール中に映画のストーリーを思い返してみたり、自分自身の想いを整理してみたり、伏線回収を考えていたり…とやっていられる方は多いのではないでしょうか…その時に流れている曲って案外大切なもので自分の思考を左右させてしまう場合が多い。監督のクリント・イーストウッドは敢えてエンドロールを無音にしました…『貴方は本作を観てエンドロールにどのような曲を当て嵌めますか?』とココでも私たちに委ねてきています。本作を鑑賞してどう感じるか…もしかすると100人いたら100通りの想いがある作品なのかもしれませんね。

軍師かんべえ

私は戦争に善も悪もない…と感じました。いくら大義を掲げても、正義だとしても人間が殺し合う事は異常な事であると…私たちがいくら正義であると思っても…相手からすれば悪となってしまう。番犬であるはずが…オオカミになっていたという事である。

番犬であれ

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クリスの父ウェイン・ケネス・カイルは子供たちの教育としてマッチョ・イズムを叩きこんでいました。男たる者は強靭さ、逞しさ、勇敢さ、好戦性を持っていなければいけないという精神論。強い者にただ従うだけのは我が家では育ててはいない。弱き者を理由もなく襲うオオカミになれば制裁を加える。弱き者を守る番犬となれ。この精神論を叩きこまれたクリスはアメリカ海軍特殊部隊Navy SEALsに入隊。強大な悪(オオカミ)から母国アメリカ(羊)を守る番犬になる決意を固め戦地のイラクへと向かう事になる。しかし敵としていたイラク軍はオオカミだったのか…守るべき母国は羊であったのか…我々Navy SEALsは番犬だったのか…この葛藤がクリスを悩ませてしまうのである

アメリカの正義

イラク戦争におけるアメリカの正義とは一体なんだったのだろうか…9.11アメリカ同時多発テロの首謀者ウサマ・ビン・ラディンをイラクが匿っているという難癖から始まりイラクの大量破壊兵器保有という事で始まったイラク戦争。9年間繰り広げられた中で戦死者は5万人を遥かに超えているらしい。果たしてクリスが守ろうとしたアメリカという国はだったのか…倒そうとした敵国のイラクはオオカミだったのか…父ケネスの『弱き者を守る強者になれ』という教えとは真逆の事をやっています。イラク国民(羊)を守る傭兵ムスタファ(番犬)をクリス(オオカミ)が食いちぎったのである。本人は自覚症状は全くない訳ではなく自分たちアメリカ軍がやっている不誠実な侵略は認識しているはず…しかし一軍人であるクリスはただ上層部の命令に従うしかないのである。例え自分がオオカミという自覚があったとしても…だからこそクリスはPTSDに掛かり悩まされる事になったのではないでしょうか…

父の教え

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クリスは幼少の頃に父に猟をする時に『ライフルを地面に置くな』と教えられていました。コレは『戦場に於いて攻撃性を失うな』というメタファーに私は感じとれました。銃を置く時は死を覚悟する時か…もしくは戦場を去る決意が出来た時。唯一同じ世界観にたいムスタファを狙撃できた時にクリスは退役する決意を固めます。クリスは父の『ライフルを地面に置くな』という教えを破り戦場に銃を捨て母国アメリカへと帰っていきます。なぜクリスは銃を捨てたのか…それは同じ世界観にいたムスタファを狙撃した事で自分が明確にオオカミであった事に気付かされたのでしょう。自分が今まで守ってきたもの…攻撃していたもの…全てが間違っていた事を…

軍師かんべえ

アメリカ海軍の中では『英雄』とされていた男はイラクからは『悪魔』と呼ばれていた。まさに『番犬』と『オオカミ』の関係に似ています。人はいつでも『オオカミ』になれるって事ですよね

総括

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人の価値観というものは実に恐いもので今まで自分が正しいと思ってやっていた事は他人からみれば悪行と捉えられる事もある。ましてや命令系統で動いている軍隊などは上層部の決定事項が全て正義であり現場で戦闘を繰り広げている兵士たちは『正義』だ『悪』だなんて考える余裕すらないのかもしれません。結果としてアメリカはイラクでの戦争の間違いを認める事になりましたが恐らくアメリカという国は何も変わらないでしょう…次はもっと明確な大義を作らなきゃ…程度でしか考えていないかもしれません。監督のクリント・イーストウッドはベトナム戦争に従軍した経験がある戦争体験者でもありました。ベトナム戦争と云えばPTSD患者が多発した戦争でもあり人一倍にイラク戦争に対し思う所があったのかもしれません。この作品を通してクリント・イーストウッドが伝えたかった事は…クリス・カイルが伝えたかった事は…戦争を肯定する事でも否定する事でもなく、まず人間という本質を知ることこそが平和に繋がっていくのではないでしょうか…人は争う生き物である。これは歴史が証明している通り目を背けてはいけない事実なのである。だから戦争は無くせないという訳ではない。メカニズムを知っていれば対応も可能なのである。だからこそ人は『譲り合い』『助け合い』をする事で分かち合えるのである。まずは小さな所からでも構わないと思います。小さな優しさはやがて大きな波となっていくのだと私は思います。今回は良い感じにまとめられました…って所でオツカレっす!

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