『タクシードライバー』をモーっと楽しもう

軍師かんべえ

おかえりなさいませ
『タクシードライバー』
徹底解析・完全ネタバレとなっております
鑑賞前のお客様は予備知識記事に移動下さい

『タクシードライバー』の考察レビューとなっておりネタバレが含まれております。
未鑑賞の方は鑑賞前の予備知識編の記事をご確認の上で再度お越しください

タクシードライバー

引用元:タクシードライバー(映画) – ブログ de ビュー (goo.ne.jp)
引用元:映画『タクシードライバー』デ・ニーロ演じるトラヴィスは孤独のメタファー

1976年:アメリカ・日本公開
監督:マーティン・スコセッシ
脚本:ポール・シュレイダー
製作:マイケル・フィリップス、ジュリア・フィリップス
出演者:ロバート・デ・ニーロ、シビル・シェパード
    ハーヴェイ・カイテル、ジョディ・フォスター 他
音楽:バーナード・ハーマン
撮影:マイケル・チャップマン
編集:トム・ロルフ
配給:コロンビア映画

1976年公開 マーティン・スコセッシ監督の『タクシードライバー』一般受けのアカデミー賞ではなく文芸的な作品が受賞されやすいカンヌ国際映画祭でパルム・ドールを受賞したところが本作がどういった作品なのかを物語っているのかもしれません。

『タクシードライバー』はアメリカがベトナム戦争から撤退した3年後に劇場公開されていたという事が重要であり1976年のアメリカでは帰還兵のPTSDが社会問題になっていた時期でもありました。

PTSD(心的外傷後ストレス障害)とは…
実際にまたは危うく死ぬ、深刻な怪我を負う、性的暴力など、精神的衝撃を受けるトラウマ(心的外傷)体験に晒されたことで生じる特徴的なストレス症状群のことをさします。

引用元:PTSDとは | 日本トラウマティック・ストレス学会
引用元:ベトナム戦争後のPTSDは40年後も続いていた

劇中でベトナム戦争とは一言も語っていませんが当時の帰還兵といえばベトナム帰りの事であり最も戦いが激化した時期にトラヴィスはベトナムに従軍していたことになります。

1976年という時期なら『帰還兵』で『不眠症』というワードだけでPTSDとすぐに紐づけすることができますが戦後40年以上も経った今ではトラヴィスを異常者とでしか理解できなかった方が多かったのではないでしょうか。

引用元:タクシードライバーHD壁紙無料ダウンロード

1976年頃のアメリカではトラヴィスのようにトラウマに悩まされている退役軍人が多かったに違いありません。『私の近所に住んでいる退役軍人も狂ってるかもしれない』なんて考えてしまいますよね。

本作は冒頭でトラヴィスがPTSDを患っているという情報が提示されています。以後、私たちはトラヴィスがいつ爆発してしまうのか…という恐怖に怯えながら鑑賞することになるのです。

ただ残念ながら現代でココまでの知識を詰め込んだ上で鑑賞する事はなかなかしないですよね

本作は賛否両論に分かれる傾向があり、当時の情勢を知っているのか…知らないのかで感じ方も変わってくる作品だと私は感じました。

もちろん私は名作として評価している人間ですが人にオススメをするような映画でもない事も理解しているつもりです…と書きながら本作をアツく紹介しているのはココでは私の思いの丈を十分に語れるからです…といったようにココでは『タクシードライバー』を既に鑑賞しているという前提で記事を作成しております。ネタバレ注意となっておりますのでご了承ください。

『タクシー・ドライバー』 予告編 Taxi Driver Trailer 1976.

底辺職

引用元:「タクシードライバー」のオレに言ってんの?シーン

先に言い訳を述べさせて頂くのだが私の勝手なイメージであると捉えて欲しい。

アメリカという国でのタクシー運転手はこれ以上のキャリアアップが見込めない職業という勝手なイメージが私の中にはあります。

難しい会話をする必要もないので外国人が多く雇われていたり低学歴でも働けます。勤務時間も不規則でアメリカともなれば危険も伴ったりします。低賃金で過酷な労働をさせられる…という日本で言う『3K』とよばれる職業というイメージがあります(当時のアメリカのタクシー運転手という意味です)

主人公のトラヴィスは海軍にいたと語っていました。だとしたら軍の中ではエリート部隊にいた可能性が高いことになります。

引用元:『タクシー・ドライバー』Vol.2|トラヴィス=デ・ニーロの肉体改造hあ

軍ではエリートでも社会に戻れば仕事に就けない地位にまで下がってしまう現実が待っていたのである。しかもPTSDとなれば更に難しかったでしょう。

今と違い保障制度も充実していなかった時代ですからトラヴィスのようにタクシードライバーとして働いていた人も多かったのではないでしょうか…

この作品はタイトルが示す通り底辺職である『タクシードライバー』をトラヴィスが職としているという点が重要なのである。

エリート部隊にいても社会に戻れば底辺と呼ばれる仕事をしかできないのである。しかしトラヴィスは街に蔓延っている人間と自分とでは一線を画していると感じているのである。

自分は違う…自分は何かデキる男だ…などを妄想しながら夜の街をタクシーで徘徊しているのだが現実は何も起こすこともなく何も変わらない日々がただ過ぎていくのである。

引用元:映画『タクシードライバー』の私的な感想―ジョーカーとトラヴィスの悲観論の違い

一見は理想が高くインテリ感のあるトラヴィスであるが大統領候補のパランタイン上院議員を偶然にもタクシーに乗せたときに彼の薄っぺらさが分かってしまうのです。

職場の先輩には『何かデカい事をやりたい』などの答えようのない相談をしてくるのである。先輩は『俺たちは負け組なんだから女でも抱け』と答えるしかありません(笑)

トラヴィスの社会での立場をタクシー運転手という職業で表現していたのではないでしょうか…そんなトラヴィスは口癖のように『何かデカい事』と言葉にしているが彼が本当に求めていたのは行動ではなく誰かからの承認欲求だったのです

軍師かんべえ

タクシー運転手の方…本当にすみません。私の勝手なイメージですので悪気はありません。失礼しました。

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承認欲求

引用元:40年以上経った今も現代社会の闇を感じさせる『タクシードライバー』

承認欲求とは…
「自分を見てほしい」「話を聞いてほしい」「誰かに褒めてほしい」といった「他者から認められたい」という欲求

引用元:承認欲求とは|強い人の特徴や対処法
  • 自分の話を聞いてほしい
  • 自分のがんばりを褒めてほしい
  • 自分の活躍をいろいろな人に見てほしい
  • 他人よりも自分の方が優れているとわかってほしい
  • 苦労していることをわかってほしい
  • SNSで「いいね」がたくさん欲しい
  • 不特定多数の人に好かれたい

上記に挙げた感情は誰もが持っている自然な感情であるので該当していたとしても何も心配をする必要はありません。ただ承認欲求が強すぎれば時として自分を苦しめたり、周囲の人を不快な気持ちにさせてしまう事もあります。

『タクシードライバー』を観てトラヴィスの行動が理解できなかった方が多かったのではないでしょか…

初デートでポルノ映画に連れて行ったり、暗殺計画であったり、少女アイリスの救出作戦であったり…唐突に行動を変えるため理解に苦しむことになりそうですが…彼がただ承認欲求を満たすためだけに行動していたと理解すれば納得するのではないでしょうか…

恋愛

引用元:タクシー・ドライバー Part2 Travis & Betsy : Sound Of Life 音楽と生活

確かにベッツィーは清楚で可憐すぎる女性ではあるがトラヴィスは本気で彼女に恋をしていたわけではありませんでした。

猛アタックしているように見えますがベッツィーという存在を欲しているのではなく、気品ある女性から自分は『愛されている』というだけの欲求であり極論からすればベッツィーでなくても良い訳である。

なんなら『愛されている』でなくとも『認められる』『敬われる』でもトラヴィスは構わないのである。

ポルノ映画

なぜ初デートでポルノ映画に連れて行ったのか…というのは彼に下心があったわけでもなければサイコ的な意味でもなく…純粋に楽しいと思っている映画を一緒に見たかっただけなのだと思います。

PTSDの特徴として生活のあらゆる事象が引き金となってしまいフラッシュバックのようにトラウマとなった出来事を思い描いてしまうことがあるみたいです。

色々と考え込んでしまうドラマや映画よりもただ行為をしているポルノ映画の方が彼にとっては何も考えずに楽しめたのではないでしょうか…その楽しみをベッツィーと共有したかっただけなのかもしれません。

だからトラヴィスは喧嘩別れした後も彼女が何に対し怒っているのかの理由が分からないのです。

そしてトラヴィスは次に暗殺の計画を練っていくのですが失恋が暗殺計画の原因になっている訳ではありません。わざと関連しているかの様に見せていますが実は引き金となった出来事が別にあったのです。

大統領候補暗殺未遂

引用元:タクシードライバー(1976年)

ベッツィーとの失恋が全く関係してないわけではないが…清楚で可憐だと思っていたベッツィーでさへもマンハッタンの腐れ切った人間たちと何も変わらなかった事を悟ってしまったトラヴィスはこんな街を作ってきた政治家が悪いと感じてしまうのです。

引用元:シン・ゴジライアンさんさんはTwitterを使っています

暗殺計画のキッカケとなったのはベッツィーではなく、不倫をしている妻をこれから殺しに行くと言っていた乗客の男なのである。

妻は罪を犯した…だから罰を報いるべきであるという男の単純な理論がトラヴィスに突き刺さったのでしょう。男の行動がトリガーとなってしまい暗殺計画へと移っていくのです。

あれだけの時間を使って暗殺計画の準備をしていたのにも関わらずあっさりとSPに不審者としてマークされてしまい計画が失敗に終わってしまいます。

ここで重要なのは結果ではなくトラヴィスが中二病のように仕込み銃を準備していたり暗殺に備えて肉体を作っているシーンなのである。

ポーズを取ってはニヤリ、鏡を見てはニヤリ…といった様にトラヴィスの考えている事は自分という存在をいかにアピールするかというまさに承認欲求なのであります。

アイリス救出

Taxi driver 1976 real : Martin Scorsese Robert De Niro Grand prix du Cannes Film Festival 1976 Collection Christophel
引用元:『タクシードライバー』が映画界に残したものとは?

暗殺計画が失敗に終わってしまった帰りに唐突にアイリスの救出作戦に移行していました。恋愛でベッツィーでなくても良かった…と同じように注目をされる出来事は暗殺でなくても良かったのです。

例えるならラーメンを食べに店に行ったら店休日だったので近くのトンカツ屋に行った…みたいな感じです。満腹感を得るならラーメンでもトンカツでも構わなかったのです。

Jodie Foster en una escena de la película “Taxi driver” Género: drama Año: 1976
引用元:「タクシー・ドライバー」

ここで重要なのはアイリスは助けを求めていなかったという点です。トラヴィスは自己満のためだけにカチコミを決めただけという事になるのです。

引用元:【ベストコレクション】 タクシードライバー 銃 –

トラヴィスの行動原理が理解できなかった方は納得がいったのではないでしょうか…彼は承認欲求を満たすためだけの行動をしていただけだったのです。

ただしトラヴィスを異常者の行動だと思っていたのなら大間違いです。誰もが承認欲求は持ち合わせていて道徳や倫理によって欲を抑えているだけであって、トラヴィスのように暴走してしまう恐れは誰もが持っているのす。

軍師かんべえ

この映画の怖いところは自分もトラヴィスのようになる可能性を秘めいているという点なのです。

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満たされた欲求

引用元:タクシードライバー – 解説・レビュー・評価 | 映画ポップコーン

ベッツィーとの恋愛は失敗に終わり、暗殺計画も失敗に終わってしまうがアイリスの救出作戦が成功した事によりただの自己満ではあるが承認欲求を満たすことに成功したトラヴィス。

更に世間では12歳の少女をマフィアから救ったと英雄的な扱いの報道がされた事で予定以上に承認欲求が満たされる結果となったのです。

引用元:Twitterにログイン / Twitter

そして恐怖のラストのシーン。偶然にもベッツィーをタクシーに乗せることになるが欲求を満たしているトラヴィスはベッツィーに対し興味を失っている…というラスト。

しかしミラー越しに移るトラヴィスの目は…

『こいつ またヤルな…』

軍師かんbねえ

狂気に満ちた男が野に放たれた…というラストは恐怖ですよね

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総括

引用元:タクシードライバー(映画) – ブログ de ビュー (goo.ne.jp)
引用元:映画『タクシードライバー』デ・ニーロ演じるトラヴィスは孤独のメタファー

当時のアメリカ政治を皮肉ることでブームとなったアメリカン・ニューシネマの最期の作品と云われている『タクシードライバー』

1976年という時代のアメリカではベトナム戦争の帰還兵によるPTSD問題が深刻化していた時期でもありました。しかしアメリカは以後も戦争を国の経済向上の一環として幾度となく繰り返していくのです。

PTSD問題は2003年に開戦されたイラク戦争でも深刻化されました。本ブログでも過去に『アメリカン・スナイパー』という実話を題材にした作品を取り上げています。併せてお楽しみください。

クローズアップで観ると悲劇だが…
    ロングショットだと喜劇になる

映画『JOKER』の中のセリフを書かせてもらいました。ご存じの通り2019年に公開された『JOKER』は『タクシードライバー』からインスパイアされて製作されたことは有名な話であります。

JOKERへと変貌していくアーサーがぼやいたセリフなのだが私には本作と重なって見えてしまいます。

トラヴィスの行動は細かく見ていると狂気じみた狂乱者のように思えるが結果としてアイリスを救ったことで人々からは英雄視されてしまいます。

『一人殺せば殺人鬼だが100万人殺せば英雄』

本当にこんな格言があるのかは知らないが…聞いたことのある言葉でコレも本作と重なってしまいます。

殺人鬼であっても英雄であっても所詮は人の印象に過ぎないのである。喜劇でも悲劇でもコインの裏表みたいなもので見方の問題であって考え方なのではないでしょうか…

私たちが過ごしている平和と思っている暮らしも何か一つの出来事で地獄に変わる可能性を秘めているのかもしれません…っといった所でオツカレっす!

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